「しまった」ナノは言った。
その不吉な一言で私の血が凍り付くと同時に目を開けてはいけないと思った。僕が叫ばなかった唯一の理由はそうするのを忘れていたからだ。正直なところ、おそらく最善の選択だった。
僕の前に、おそらく3本足かそれらしきものをもつ、僕が今まで見てきた中で最も大きな猫が立っていた。立つとほぼ僕と同じ高さはあった。猫は口から出ている輝くサーベルの様な牙を強調する光沢のある黒いコートを身にまとっていた。
知性、好奇心、驚き、そして確実に喜びの輝く緑の瞳で僕を見ていた。
誰かが彼の夕食の仔馬を持って行かなかったようだ。そして、大きな黒い翼を掲げて超自然的な叫びを噴出した。
「悪かった。」
その後、猫は消え去っていた。僕の周囲に圧力を感じ僕の目は強制的に閉じられていた。圧力から解放された時、僕は目を開けないでおこうと決意した。何者かが僕を食べたがっているのなら僕は何者かがそれをするのを見たくないと確信していた。
「今はもう目を開けていいですよ。」
「いいや」僕は小さな爪が僕の太ももをつかみ肩まで駆け上がるのを感じた。シノブが僕の首に巻き付き顔を僕になすりつけると僕は目を開いた。
「やあ、ハニー。僕がいない間お利口にしていたかい?」
僕らは湖畔に戻ってきていた、まさしく僕らが出発する前にいた場所である。シノブはゴロゴロと大きく喉をならして返答した。
「今からディヴィーナとエドワードを見つけ出しましょう。」とナノは言って歩き出した。
「それは、何らかの理由であなた達2人がお互いを罰しあっているとニーラが言ったことを思い出させます。」
「私は彼にニーラという名前を与えました。私の妻の姉妹が彼女の息子をどのように呼べばいいかと尋ねた時、私は不機嫌でした。私は甥を意味するニーラと言いました。ニーラはその名前のせいで何度かいじめにあい、彼は私のベッドに有毒昆虫を置くことを決意しました。私は彼の好物が給仕されずに、代わりに彼の嫌いな物が給仕されるようにキッチンで彼のメニューを再構成しました。」
「彼は、僕を誘拐してあなたを罰していると言いました。」
「私はあなたに彼を監視するように言いました、なのでそれは無しにしましょう。それにあなたがその事を心配する以前に、彼はキッチンの食べ物を盗み出す為に君を秘密の通路を通って連れ出したことを知っています。」
「ではニーラは本当にあなたとは関係していないのですか?彼はあなたの妻の姉妹の息子なのですか?」
「まあ、私はもう既婚者ではないが、違います。私たちは生物学的に関係ありません。彼の父親の死後、彼の母親は不安定になり私が彼の面倒を見ていました。」
「彼はあなたの父親は殺害されたと言いました。」
「彼らは腹違いの兄弟ですが、アドレーは私生児でニーラが王位を継ぐまで彼が王の子であると認める事を拒否していました。私たちはアドレーが彼を殺害したのではないかと疑っています。なぜなら彼はニーラの母親と結婚する為にアドレーの母親を捨てたからです。ニーラがヴォイドだということが発覚したとき、アドレーはニーラ側につきました。彼はニーラを殺害して王位を継承したいのです。」
「それでなぜあなたはニーラを彼の側に置いておくのですか?」
「ニーラは自分自身を守る事ができます。どのような魔術の攻撃を彼に直接与えても効果はありません。どんな魔術攻撃を彼に間接的に与えてもゴブリンによって制御されます。彼らはとても有力だし、彼らは簡単な仕事を愛しているので、彼らは王を守るでしょう。」
「アドレーはウィザードなのですか?」
「はい。彼は残念ながら私と関係しています。彼は私の来孫(ひひひ孫)です。」
「でも一つの世界において全てのウィザードが世界のガーディアンの子孫であるというわけではないですよね?」
「ありません。何百年毎にガーディアン達は他の世界へ行くことを奨励され、結婚するのです。私たちが似たような身体つきをしている理由の一つは、それなのです。」
「したがって、全ての人間が人間というわけではないのですか?」
「ロネスは人間ではありませんでした。私たちは実際に生まれた国をその人の国だとみなします。私はウィザードの約半数が世界のガーディアンの子孫であるとみなすことができます。それは一人以上のガーディアンの子孫である人たちも含んでいます。さあ、今はエドワードとディヴィーナを見つけ出さなくてはいけません。座ってください。」彼はベンチを指差し言った。
「え?」
「座ってください。」僕らは座った。
「さあ、君の精神をさまよわせて、本の周りで思考を巡らせるのです。」
そして僕は夢想した。
約20分後、僕の心は本にあった。僕はいつも神経質であったが僕の本に対しての心配については何か更に強いものがあった。それはまるで暗い豪邸かもしくはモンスターでいっぱいの霧の中に居るかのような感じで、ただし、今回は暗い豪邸もしくは霧の中にいるのは僕の本なので、それは最悪の状況だった。僕は、本から活力を与えるような温かみを感じた。そして、感じるだけではなく、本が何処にあるのか感じ取ることが出来た。
* * *
これは感覚的過負荷だった。大半の屋台では僕が想像すらできないものが売られていた。そこには魚や触手、将来的に無害で紛れもなく恐怖を与えるような大小丸ごと魚海類。まるごとの魚や、切られている魚、大、小、微小のサイコロ状に切られた、小さな袋に入った魚の干物、生きた魚、魚の干物、煮魚、バケツに入った魚、調理された魚、魚の目、魚の骨、皮付き魚、魚の皮等々…、なんてこった、こんなに多くの魚の種類や調理方法、展示方法をみたことがなかった。いたるところに魚があり、そして魚だけではなく触手や爪や足もあった。枝にさされたものや袋に入った海の生き物、煮たものや生もの、味付けされたもの、シンプルなもの。
異なった食感や色、香りの香辛料や輝く色のお菓子のスタンドがあり、飲料のみを販売しているキャビンもあった。野菜、果物、穀類、胡桃、香辛料、肉、透明な箱にはいった完全に準備された食事…、バリエーションは驚くべきものであった。そして全てが農民や漁師たちの大きな市場のように、キャビンの所有者によって捕獲され、作られたもの、もしくは栽培されたもののようだった。新鮮な死んだばかりの肉、生肉や調理された肉の臭い、そして僕は香辛料の香りで息苦しくなり始めた。僕には、これらの個々の臭いが良かったかそうでなかったか分からないが、それらの組合わさった臭いは堪え難いものだった。
通りすがりに店のオーナーは僕やナノに材料のサンプルを押し付けてきた。その後、ナノと僕は全く人気のない道へと曲がった。
キャビンや人気はなく、あるのは建物の側面や裏口のみだった。
「今は話してもいい、私は聞き耳をたてている者から私たちを守ります。それで、あなたはデュランを楽しんでいますか?」ナノが僕に尋ねた。
「すごく楽しんでいます。お金や学校の都合で地球では旅行をするに至った事がないのです。時間や大学へ支払ったお金を全て投げ捨てたという考えはまだ自分の中に浸透していませんが後悔はしていません。この世界の各曲がり角で何かを発見していっているような感じです。僕はまだ一台の車が通り過ぎるか、教会もしくはスターバックスに出会うのを期待しています。自然の近くに存在するという国民の哲学が好きです。でも僕は依存関係が好きではありません。」
「それらはショモジイでは一般的ですが、ここではそうではありません。」
数分歩いた後、彼はペースを落とした。
「君をマルタのところへ連れていきたい。」
「遠いのですか?」
「まあ、そうですね、残念ながらマルタ星はとても遠いのです。そこに行くためには君はエミリーの本にサインしなくてはいけませんし、今それは選択肢にありません。太陽が最も近く3つの月が完璧に整列している今週はゴールデンウィークです。マルタは改革前のショモジイのようなものです。人々は元素を崇拝し、彼らの神は長い間彼らの邪魔をしませんでした。ほとんどの人々は地、空気、水もしくは火をコントロールする能力をもっています。時空を超えて未来や過去を見る事ができる人が少数います。何人かは治癒の魔術を使いこなします。人々は其々が使う魔術の種類に基づいて部族ごとに生活しています。司祭達は教師であり、世界中の寺で生活しています。部族の各子供は正しく教育されるまで寺院にて教育を受けなければいけません。それは多くの親たちが恐怖や嫉妬によって彼らの子供たちの能力を達成することを妨げていたからです。彼らは彼らを取り巻く感情や感覚を感じとるエンパシー(感受性)が並外れていて、これらの人々は子供のころから穏やかな平和主義、また公然と愛することを訓練されているのです。彼らは平和の番人なのです。」
「他人の痛みの身近にいる事はもしかして時間とともに彼らを腹立たせたりはしないのだろうか?」
「いいえ、この恐ろしい呪いとともに彼らはただ触れるだけで身体的、また感情的苦痛を治癒する力を備えているからです。治療を受けている人々は再び彼らの苦痛を生きなければいけないけれども、エンパシーは彼らとそれを通過し、終えた時、人ははるかに良くなっているのです。治癒力は所有するには危険をともなう才能なのです。」
「それでは、世界は年老いたウィザードで溢れているというわけではないのですか?」
「大半は溢れていませんが、マルタの神マデュスは手本に従うのを嫌っています。彼の国民が彼を決して独りにしない方法をとりました。時間をコントロールする人々、誰も彼に雨や豊作を求めることができない方法、病人、もしくは心を治癒する人々。彼らは12の神、ガーディアン達、そして死者の地を理解しているので何故、ということを彼に尋ねるこことができません。唯一彼が行ったことは、ゴールデンウィークを与えたということだけです。全ての混乱がなくなり、病が存在しないという点においてすべてのパワーが増大される。誰も去って行かないのです。」
「他の世界から来た者を彼らはどう思っているのですか?」と聞いた。
「ディオスと同じように考えています。ほとんどの世界が他の世界の人のことを気に留めません。通常は観光客ではないので彼らはターゲットにはならないのです。」
「それなら、ドゥランはなぜそれを問題視するのですか?」
「ドゥランは自給自足の世界です。宇宙船を製造することも出来るし、交友的な隣国になることができます。しかしエロノは彼らに対して疑いを持ち始めました。彼らはあなた達が精霊と呼ぶ存在に恐怖を感じています。ただの死んだ人間ではないが、この世の者ではない。彼らは、自然には精霊がいると思っています。彼らもまた神々やガーディアンについて知っていますが、本については知りません。彼らは、世界を旅してまわれるのはガーディアンだけであるという事までは知っています。」
「なぜ本当の事を言わないのですか?」
「なぜなら、誰もドゥランのガーディアンが誰であるか知らないし、キロも彼らに知られたくないようです。もし他の者がドゥランに来る事ができるという事を知れば、キロ…、エドワードの所へ戻るよう、それらを追跡する方法を見つけ出すでしょう。彼らはしつこく彼の元へ来て不満を言い、懇願するでしょう。
「ガーディアン、お願いだから、雨を振らせてください。」「ガーディアン、お願い、私の娘を治癒してください。」「ガーディアン、お願い、息子の学校のいじめっ子達の目から出血させてください。」「ガーディアン、ここに私の収穫の15%の利益があります。お願いですから、収穫に感謝する為にオロノまでこの大部分を届けてください。」「ガーディアン、私の家を売却して私の妹と暮らすべきですか?」「ガーディアン、僕のように全ての人々が知的な世界へ私を連れて行ってください。お願いします。」「ガーディアン、あなたの息子を産んでもいいですか?」」
「頼むから止めてください!解りました!もうガーディアンになりたくありません!」僕は怒鳴った。
彼は僕の爆発を見て笑った。
「なぜあなたの国民はあなたがガーディアンである事を知っているのですか?」
「私は常に旅をしているので彼らは私を待ち伏せする事ができない。その上、彼らには困らせるための王がいるのです。そして3つ目に、私はできるだけ攻撃的で恥をかかせるような言い方をします。そうすることによって全ての人は私がとげとげしくてエゴイストかを耳にしています。」「あなたはとんでもない愚か者だと、僕は確信しました。」
「どっちにしろ、それらの大半が宗教的なことです。殆どのサゴは、あらゆる種類の超自然的現象に直面したときに、手を上げて離れて行ってしまうでしょう。ここにいる人々の大半は、神々や本などと関わりたくないのです。エドワードにデジーヴァについて説明してもらって下さい。とても愉快ですよ。」
「ここには水槽などありますか?」
「ええ、動物園もありますよ。」
「そこに行けますか?」と、期待しつつも出来るだけ子供っぽく聞こえないように尋ねた。
「君は、エドワードに連れて行ってくれるよう頼むしかありません。私もそれらは好きなのですが、アノシイのどこにあるか分かりませんし、エドワードも君のことを心配していると思います。」
「僕はどうも危険を引きつける磁石の様なものですから、彼が僕を連れて行ってくれるとは思いません。魔術によってそういうことが無くなるよう期待しています。」
「連れて行くべきです。君がもう待っていること期待するとは思えない…。」
僕は何かに躓いて堅い地面に転んだので、彼の言ったことを最後まで聞けなかった。僕がつまずいた何かを動かそうとするとそれが動き始めた。僕は後ろに転がって、僕の顔に攻撃しようと反動する巨大な黒蛇を見るだけの時間しかなかった。僕の頭よりも幅広く口を開け、シューシューと音を鳴らしたので牙の後ろに火花を見る事ができた。
毒と電気ショック…、最高だ。
スローモーションや自らの人生が目前を走馬灯のように駆け巡ること、もしくは蛇を止める為の魔法さえもなかった。
唯一僕の頭をよぎったことは、もし水族館にペットのような魚を売るお土産店があればいいのにということだった。
蛇が痛みで跳ね上がった時の叫びを聞いた。シノブがマングースのように攻撃したのだ、目に噛み付こうとしている間、爪は蛇の頭に深く埋もれていた。
まさしくナノの赤い照明があてられた瞬間、蛇はシノブをふるい落とすことができた。僅かな食事の為にすごく手間がかかるとみなし、蛇は驚くほど急速なスピートで去っていった。
今度はナノが私の上にいた。彼は手を差し出して僕を引き起こした。
「ありがとうございます。」彼が僕を引き起こす際に言った。僕の両膝はすりむいていたが蛇に丸ごと食べられてしまうよりは、はるかに良かった。
「君は危険な状況にあまりにも慣れすぎていますね。それよりも君はそれを受け入れる事にとても慣れすぎています。君は子供の頃に虐待を受けたのですか?」
「実際のところ受けた事はありません。僕の人生に何人か攻撃的な人は存在したかと思います。」多くの攻撃的な人々。僕は毛が逆立っているシノブを取り上げた。
彼女はご機嫌ではなかったが落ち着きを取り戻し、僕が彼女をつねり始めたら僕の首にしっぽを巻きつけた。
「それで彼らは君に戦い方を教えましたか?」
「僕は必要な時にだけ戦います。僕は本当に戦うのが嫌いなのです。」
「あの蛇は君を殺そうとしました。君はそれに対して何かしようと考えなかったのですか?」
「僕は本当にそういったことは考えないのです。僕は水族館の事を考えて…、」
「そのことを言っているのです!君は君の運命に対して戦わなくてはいけません。君自身がそれは避ける事ができないと自分に言い聞かせてそのままの状況にしているというように、君は危険に慣れすぎてしまっているのです。」
「常にそうではありません。僕は優れた走者です。」
「君は優秀なガーディアンではありません。あなたの魔術か剣で抵抗しなさい。決してほうっておかないで。」そうして彼は背を向け歩き出した。
優秀なガーディアンではない…、僕はエドワードやロネス、ティアマト…、地球の全ての人を失望させている人。おそらくエドワードが本を獲得するのを許し、他の人を訓練させさせるべきだったのかもしれない。
「また地について何をしているのですか?」ナノが聞いた。
僕はまた地面に転んでいたのに気づき、立ち上がって彼をにらみつけた。僕は自分が何をしていたのかを知る前に怒りで自己卑下を感じ、ドサッと倒れ込んでいた。
「一週間!僕はまる一週間も魔術について見聞きしなかった!ある日僕は自宅前の芝生にあった一冊の本を拾った。3週間後には、ある男が現れ、彼と行かなければ僕に近づいた者は全て死ぬと言った、ああ、それに僕はウィザードのクズだと言った。僕は地獄のトゲトゲ猫と戦うはめになり、そして雷にうたれた。僕は死んだんだ!僕は愛していると思っていた女の子に電話でさよならを告げ、次に僕が覚えているのは危険な生物でいっぱいの世界で目を覚ましたことと、なんと!ある神は、僕を殺して僕が突然責任を負うことになった世界を破壊したがっているということだ!僕は毒を持った巨大なオオカミや猛禽類に追いかけられ、危うく僕の足をもぎ取りそうになった植物の毒で超珍しい感染病にかかった。新しい言語を覚え、この馬鹿げた重力に順応しようとしている中、ひっきりなしに魔術の課題がある。そして僕はこの新しい世界で迷子になり、他のガーディアンに拾われた上に、僕はただのウィザードではなくスーパーガーディアンであって、水の精や巨大クモがいる新しい世界に連れてこられたと言う!巨大蛇が僕の顔を食べようとしたときに正しく反応しなかった僕を許してください!」
話し終えた時、僕は息を荒げていた。唖然とした表情から彼は話す気はなさそうだったので、僕は続けた。シノブも唖然としているようだった。
「家に帰ってください。僕は一人でディヴィーナとエドワードを探します。」
「君を独りにすることはできない。」
「あなたは一日中僕の面倒をみていますが、必ず自分の行くべき道を見つけ出す事ができます。」
彼はため息をついたが、今回だけは背をむけて歩いていかないようだった。
「私たちは君が子供ではない事を知っています。私たち皆が知っています。そして君がそのように振る舞っているというわけでもありません。でも君は21歳くらいですか?本当に君の世界では法的に成人なのですか?私は562歳です。エドワードは2000歳以上です。ディヴィーナですら君よりずっと年上です。馬鹿げているけれど。私たちにとって君は子供なのです。ガーディアンにとっては全ての人が子供なのです。そして今、君は私たちの仲間の一人なのだが、私たちに比べると君はまだ赤ん坊です。いずれ、君は私たちの誰よりも強力になります。でも今は、私たち全員が君の保護者なのです。もし君が独り立ちしようとしないのであれば、私たちには君を護り、訓練し、指導する意味がありません。これが君の最初の1週間であるという事はわかっています。君は素晴らしく学習していますが、君は強力であるということを頭においておく必要があります。今の君はおそらく皆に頼らなくてはいけないので、それが君を失望させているのは解りますが最終的には皆が君を信頼するでしょう。君は君の強みを知り、それを使うべきです。君は君が何者なのかを知るべきです。」
そうして彼は背を向け歩いていった。
* * *
エドワードに扉を開けて以来僕に起こった全てのことを処理しながら1時間くらい座り込んでいた。そして一時間後、奥深い結論にたどり着いた。僕にとって、この人生がどれだけ危険であろうと、またどれほどの問題に関わろうと、自分をどれだけ見失っていようとも、構わなかった。この人生は僕の地球での人生より良かった。
もう一度、僕の本に集中して、身動きせずにいた。シノブは目を開き、僕を見た。
「ごめんよ、僕は君を起こすつもりはなかったんだ。」
彼女は謝罪を受け入れ再び目を閉じた。僕とナノが進んでいた道でもう一度スタートを切った僕は歩くペースを落とし、躊躇して止まるまで何分間か旅をした。僕は正しい道を進んでいないことは知っていたので、僕は戻って、何も考えずに通り過ぎていたところを左折した。
この道はほとんど人気がなく太陽の光さえも避けているようだった。僕はさらにゆっくり歩いた。明確に放棄されていない店は不気味だった。左側に三人のとても大きい男たちの集団がいて、僕の運のおかげで、彼ら皆が僕に気づいて僕の行く手を阻んだ。
僕は前にいた男がリーダーであると想定した。彼の仲間は肩までの長さの黒い長髪なのに対し彼の髪は短くて黒く、尖っていた。彼はダークレッドのボタンアップシャツに黒いズボン、黒いローブを身にまとっていた、その一方、仲間たちは黒いズボンに黒いチュニックを身につけていた。彼らは1フィートほど僕よりも背が高く、痩せていた。
「ダノ ニ タコナッテ アンタオ」とリーダーは言った。
お金という「タコナッテ」以外の言葉は何一つ理解できなかった。もちろん彼らはお金が欲しいんだ。僕は襲われていた。地球では4度強盗されたことがある。
「ムシィ タコナッテ ジューノ ヒデ」とエドワードをうまく真似できていることを期待して僕は言った。僕は誰かの話し方を学ぶ必要なんてないと思っていたし、その頃はお金もなかった。しかしここでは学ぶ必要があった。僕はシノブが尖った全ての歯を露わにして彼らに唾をはきかけ、まるで猫のように毛を逆立てながら出したシーッという音に驚いた。彼女は完全に怒って苛ついていた。彼らは何かを繰り返し言いながら彼女を指差し、顔に恐怖を露わにして後退した。彼女のうなり声はさらに大きくなり、彼らは自分自身につまずきながら去っていった。
僕は放棄された店まで走って行き、座って優しくシノブを僕の上に引き上げた。うなり声は沈静し、毛並みも落ち着いたが彼女はまだ明らかに苛立っていた。僕は彼女を僕の側に置き撫でてあげた。
「落ち着いて。彼らは去って行ったから」と言った。
彼女は目を閉じ僕の手首に鼻をこすりつけた。彼女の小さな筋肉がリラックスしていくのが感じ取れた。
「今度は何が起こったの?なぜ彼らはとても君を怖がっていたんだ?」
彼女の僕に向けた視線は一見無邪気な笑顔としか考えられなかった。
猫・リス・モモンガのような生物にしてはとても心配だ。
どのようにしてこの小さな頭で僕の言っている事が理解できるんだろうか?
数分後、彼女を取り上げて立ち上がり、僕の肩にもとどおり乗せた。しっぽがまた僕の首に巻き付いた。次の分かれ道まで僕は用心深く歩いた。僕は本能に従いながら、もっとフォーマルな服を着た人々がいる人通りの多い道へ向かって左へ曲がった。僕がすべき全てのことは、誰かが僕に話しかける前に僕の本を見つけ出すことだった。
一人の男が意図的に僕の道を塞いだ。彼はエドワードのような体格で左側にストラップのある長袖のタイトなシャツの深緑色の制服を着用していてズボンと合っていた。彼は間違いなくドゥラン版警察官だった。くそ。
「ハソ ガ モタイセンス オ イデオ?」彼はシノブを指差しながら聞いた。
何て言おうか考えたが思いつかなかった。警察官は質問を繰り返した。彼の声か僕の突然の緊張のせいか、シノブは彼を見たが、彼女は動揺していなかった。彼は更に大きな苛ついた声でもう一度質問を繰り返した。
ディヴィーナの甘い声が僕の背後で響き、僕の全ての緊張が消え去った。
彼女は僕の隣で止まりシノブは完璧なバランスで立った。ディヴィーナは警察官の方へ向かう前に手を差し出しシノブの顎の下を撫でた。
「ハソ ガ アナーゴ?」
答える代わりに彼女はポケットに手を入れた。彼女がなにか罠をしかけるのではないかと僕の頭をよぎった。数秒間探して、彼女は小さなカードを取り出した。彼女が渡す前に彼はぶっきらぼうに取り上げたが彼女はただ微笑んだ。カードを返却する際に警察官の顔には失望の表情が現れていた。
「エマ イデオ」彼は冷たく言った。
「モワ」彼女は回答し、エドワードの鞄を取り、カードを彼女のリュックへ投げ入れた。
僕たちが立ち去る際、警察官はまだ僕らを見ていた。
声の届かない範囲になるとディヴィーナは考え深くシノブを見た。彼女は僕がどこで迷子になったのか聞くか、怒るのではないかと思ったがシノブを指差した。
「君はどこでそれをみつけたの?」声は落ち着いていて辛抱強かった。
「路地で。あなたは、どうやって僕を見つけたのですか?」
「迷子になっている事に気づいて君を探し、見つけ出したの。君はキロに会う前にその子を手放さないといけないわ。彼は決して耐えられないわ。君は彼をパラノイアにおとしいれるわ。」
「わかりました…、彼女は僕を強盗から救い、そして食べられないように救ってくれたようなものなのですけど。」と言った。
ディヴィーナが眉をひそめたので僕は迷子になってから起こった全ての事を説明したが、ディオスの部分はざっと話して、シノブの事に集中した。
「僕は彼女にただ去るように言うだけなんてしたくないです。少なくとも何か食べるものを用意できますか?なにかこの辺りに人間的社会などありますか?」
彼女はため息をついた。
「君は解っていないようね。これはとても危険なものなの。もしかして彼女は君に噛み付いたりした?」と、彼女は聞いた。僕は頭を振った。
「彼女が3人の泥棒を追いやった時、君は少なくとも疑問に思ったりしたの?」
「はい、でも彼女は僕に対しては怒ったりしませんでした。」
「警察官が君を立ち止めた理由は、この種の動物を所持する為の許可が君に必要だったからなのよ。私は許可を持っているから、その時私に会えて君は幸運だったわ。でもそれよりも、先ずは君が彼女に出会っていた事がとても不運だわ。理にかなっていないわ。」
「もし彼女がどれほど良い子か分かれば、たぶんエドワードは彼女を飼わせてくれます。」
彼女はため息をついて目を閉じた。
「おそらく彼は君にノーという言葉を説明できると思うわ。私はキロに前へ進むように言ったの。彼は気が進まないようだったけれども、群衆のことを思い出させたの。さあ、行きましょう。君の小さな友達が注目を集めているわ。」彼女は正しかった、人々は僕たちを避けていた。
僕は彼らが英語を耳にすることをもっと心配していた。
「一日以上も僕が何処にいたのかあなたは興味がないのですか?」
「知っているわ。ディオスでナノと一緒にいたのでしょう。」
もちろん彼女は知っていた。僕が唯一彼女に話した部分だ。僕がディオスで何をしたのか、僕が長い間あそこに居た時にナノが僕に何を言ったのかを知りたがっているのだと気づいた。
「僕はヴォイドであるナノの甥と知り会いました。」
「ええ、おそらく君は政治的暗殺の試み、もしくはアドレーに関わったことはキロには言うべきではないわ。実際のところ、おそらく君は地図をみたり文化や歴史について本読んだりして、ナノと良い一日を過ごしたという事以外は、キロに言うべきではないわ。本は…、まあいいわ。」
「あなたは、本は安全だと言いそうになりましたか?」僕は誰がディオスで起こったことを彼女に言ったのか知りたかったが、僕が聞いても彼女は言わないだろうという事に気がついた。
「ええ、でもそれは嘘になるわ。」彼女は答えた。
この通りは主にビジネスで形成されていて、すぐにエドワードが待っている場所に着いた。僕たちが彼に近づいた時、彼はすでにシノブの方を見ていた。
「ディヴィーナ」彼は言った。
「私は試みたわ、彼は彼女をあきらめる気がなかったの。彼女が彼を強盗から救ったと言っているわ。」
「そいつは泥棒たちを食べたのか?」と聞いた。「どこでそれを見つけたのだ?」
「彼女が僕を見つけたのです。僕を傷つけるような事はなにもしなかったし本当に彼女を飼いたいのです。あなたにはチビットがいるのに僕はドリアンを手放さなければいけなかった。彼女はそんなに騒がしくはないはずです。お願いします、彼女を飼ってもいいですか?」と聞いた。
エドワードが素早く彼女に手を差し出すと彼女は激しい音を放ち、エドワードはうなって手を引っ込めた。
「止めなさい」僕は彼女に言った。彼女は僕を見た。
「彼は友達なんだ、だからいい子にしなさい。」彼女はもう一度手を差し伸ばし僕の頬に触れた。
「良い子だ。」僕はエドワードを見た。
「いいや」彼はつぶやいた。「君が欲しければドラゴンを飼わせてあげるがこれはダメだ。君にとってよいかどうかは私には関係ない、君が寝ている間に彼女は君を食べるだろう。それは運がよくない、君は呪われている。君にはこれが何かは解らない、違うか?」
「もちろん解りません。僕は外国人です、忘れましたか?」
「その生物は彼らの世界でハンセン病をもたらしたのだ。そのひと噛みはここでは最悪だ。悪の神のお気に入りの殺人鬼のようだと人々は懸念している。それはきっとカンジイでの実験から逃げ出してきたに違いない。」
「まあ、いいです。多分彼らはそのハンセン病というものはもう処分したと思いますが。」僕は微笑んだ。
エドワードは僕の方を見たが僕は彼の視線には今はもう慣れている。
「少なくともアノシイに居る間だけでも彼女を飼う事はできますか?」
「彼女は彼に噛み付いていないし本当に彼の事が好きみたいよ」ディヴィーナは言った。
「いいや。彼女を手放しなさい。」怒りが彼のコントロール外へとにじみ出ていた。そして僕は彼の視線に対して完璧に免疫があるわけではないと気がついた。
僕は口論している時ではないことは知っていた。エドワードとの出会い以来、僕が学んだ事といえば、彼が理にかなっているということだった。残念ながら、僕の将来は疑わしいものであり、エドワードは彼の仕事が更に困難になるような事をする必要はなかった。
僕は彼女を建物の側へ連れて行きそして芝生の断片に膝付いた。
「君はもう僕と一緒に来る事はできないんだ。」彼女は僕の肩に飛び乗り、僕を見た。
「エドワードを怒らないで、彼はただ僕を守ろうとしてくれているだけなんだ。君の面倒をみる誰かが必要だね。たぶん次回アノシイに来るとき僕の魔術も十分上手くなっていて、そしたらエドワードは君を僕と一緒に連れて行くことを許してくれる。だからそのときまで君がまだ誰とも出会っていなければ…。」
彼女は眉をひそめた。立ち上がって後ろへ下がったが彼女は一歩前へ進んだ。
「だめだ。君は僕と一緒には行けないんだ。」
僕が後ろを振り返ってしまう前にエドワードとディヴィーナのもとへ戻った。シノブは僕を観察しながら置いてきた場所にまだ居た。
ディヴィーナは僕の腰に腕を回した。
「それでいいのよ。君はまた彼女に会うわ。キロは赤毛の悪い女の子が彼のカードを乱暴に扱ったからただ本当に苛ついているだけなのよ。」
エドワードは疲れているようだった。
「紙は手に入れたの?」ディヴィーナは聞いた。
エドワードは僕らの本の間にある紙の束を見せる為に鞄のフタを持ち上げた。
「よし、何か食べる物を取りにいこう。」
「どのくらいの間僕は外にいたのですか?」と聞いた。
「ドゥランのほぼ一日ね。キロが今朝戻って、私は私たちの為に宿を確保したわ。」ディヴィーナは答えた。
「私はある事を解決する為に地球へ行く必要があったが、最終的には何でもなかった。間違いなく私が君をドゥランで探している間、君を脆弱にする為のヴェルチアルの子分の策略に違いない。」
「でも僕はドゥランにいませんでした。ナノのタイミングは素晴らしいです。」
「本当は、彼の神が君をディオスに連れて行ったのだと思う。間違いなくナノはただ君と知り合いになりたかっただけだ。」エドワードは言った。
途中でディヴィーナとエドワードが何処で食べるかで口論した。僕たちは最終的に止まるまで何度も同じ道を通った。今回彼らはスド語で話していて彼らの声は僕が快適に感じるよりもはるかに大きかったが、誰も彼らに注目していなかった。サゴでは食べ物に関する口論は普通のことなのだろう。
やっと彼らの口論に決着がつき、一方向へと進んだ。エドワードの憤慨から判断すると、ディヴィーナが勝ったようだった。たどり着いた場所が他の建物と外観が似ているにもかかわらず、ここは大きくてしっかりしているようだった。エドワードが扉を開けて最初に気がついたことはとても暗いということだった。
汚れとシミのついた黒い木の床は固かった。それぞれに小さなランプと木の椅子が4つある耐久性のありそうなダークウッドの丸テーブルが5つ、その空間に散りばめられていた。天井は低く、入る際にかがまなくてはいけなかった。
レストランの反対側の端には椅子が沢山置いてある長いカウンターがあり、両側にスライドする扉があった。その後ろの壁は古いコンロや更に古い調理器具のあるキッチンとなっていた。3人の人がカウンターで料理を給仕していたが、お客は各自、料理を取りにいかなければいけなかった。お客が10人いてそのうち2人のみが女性だった。
ディヴィーナはエドワードの背後のカウンターまで僕を突っついた。彼は料理を給仕している男性のうちの一人と話した。彼はうなずいて何か言い、僕らに扉のうちの一つへ向かった。彼が扉を開けると、そこにはよく地下室などで見られるような朽ちそうな小さな木の階段があった。
「ヒャ ノ サンヤ ジューニ オテカ」
続いて素早く出てきた男性が言った。明らかに、チップを期待するようなレストランではなかった。
各扉にはスゥド語が明記されていて、それらは数字だと想定できた、なぜならエドワードとディヴィーナが何の問題もなく正しい扉を見つけたからだ。
中には、テーブルひとつとベンチのある完全に閉鎖された小部屋があった。ドアとベンチの間には小さなスペースしかなかった。一つの小さなランプがテーブルを照らしていた。エドワードは左に座りディヴィーナは反対側に座り、僕は彼女の隣に座る事ができた。
エドワードは扉を閉めた。
「君は何が欲しい?」彼は扉を指差しながら僕に聞いた。
実際に扉に描かれたメニューを見て驚いた。色は合っていて、とてもエレガントだったが、僕はそれらを一切読む事ができなかった。5列あって一つのリストは上から下へと明記されていた。
「これらはすべて味によって明記されている。」
彼は一番右にあるのを指差した。「スパイシー…」
彼はその左の一つを指差した。「スイート…」彼は次を指差し「塩気のもの…肉…それと…」
「酸味気のある大豆と蜂蜜のようなもの。」とディヴィーナが終えた。
エドワードは頭で同意した。
「それと反対側の列は飲み物だ。」
「もしかしてカミツケはありますか?」聞いた。
彼女はそれらのひとつを指差してそうするために少し僕の上に身を乗り出した。
「君は何が食べたい?」
「肉。何か肉味のものではなくて、ただの肉。ヘラで食べる必要のない何か。」と、言った。
彼女は眉をひそめた。
「僕は食事の道具で食べる事ができません。」
「君はただそれに慣れなければならないのだ。慣れるといえば、重力はどんな感じだ?」
すごくあった。
「しばらくの間その事については考えていませんでした。実のところ僕は良い空気が好きですが、公害はテレビを持たないための言い訳にはなりません。僕は全ての深夜番組を逃しました。」
ディヴィーナは僕の腕を叩いてエドワードは紙を取り出した。
「あなたは法律上の手続きはできたの?」彼女は彼に聞いた。
彼は束ねられた内のほんの一部を取り分け、大半を彼女に渡した。
彼女が右から左に書かれたものを指でなぞる様子から縦書きであるという事は解った。
「それらは何ですか?」彼女が更にリストの下までいったときに聞いた。
「オッケー。アノシイで…殺してはならない。盗んではならない。君があらゆる魔術や武器を売るのには許可が必要だわ。君が公衆の場で何を売るにしても少なくとも3級の称号が必要だわ。君は一級だわ。君の級以外の薬品を運搬してはいけないわ…。」
「僕に適用することのみ言ってくれませんか?」
彼女は再度沈黙した。エドワードはディヴィーナが規則を読んでいる間ペンで数枚の紙に記入した。
「君がグレード3以下の武器や魔術を購入するのには最低級も何も必要ないわ。」
「何が含まれているのですか?」
彼女は考える為に少し止まった。
「武器、ナイフ、短刀、剣そして弓は全て含まれているわ。焼却炉、原子爆弾、100フィート以上に達する爆発物それと生物兵器は含まれていないわ。防備の呪文、元素魔術、呪い、そしてポーションは許可されているわ。心を変化させる呪文は許可されていないわ。」
「呪いは合法ではない。」エドワードは訂正した。
彼女は肩をすくめた。
「それは気に留めた事がなかったわ。君は火の取り扱いを習得する必要があるし、ドラゴンを所有するためにはライセンスコーチである必要があるわ。キロは一匹所有しているので、もし君が彼の申し出を受け入れる場合には必要だわ。」彼女は微笑んだ。
そう、僕はそれを必要としていたんだ。怒れる巨大生物の様な火炎放射器をね。
「もし君が魔術の弟子ならば指導者の許可無しにどの種の魔術も購入してはいけないわ。」
エドワードはうめいた。
「彼らはその法律を認可したのかい?」
「数年前に。そんなに昔のことではないはずよ。」彼女は、更に読み続けた。
「また、遺伝子の突然異変を引き起こすか、他人の欲求をコントロールするようなものを発明するには、少なくとも5級は所有していないといけないわ。それに発明から50日以内にそれを登録しなければいけないわ。」
「ドゥランは古い技術を持っているのだと思っていました。」
「いいえ、ドゥランには車はないし、多くの場所には電気や君の世界にあるような汚染を引き起こすような多くの物もないわ。世界を破壊する武器を用いる戦争はないし。この世界はとでも穏やかなの。精神やナショナリズムを破壊するような宗教はないわ。規律は人々にとって実践的になるように設定されているの。」
「それならば、王は何の役に立つのですか?」
「彼は人々が望みや必要性に応じて規則を確立する。ここでは、称号を特権として与えられる。通常、殺人者や重罪者は社会から隔離され、忘れ去られる。地球とは逆に、ドゥランでは皆を締め付けようとしたりはしないの。」
「なぜティアマトは地球でそれについて何もできないのですか?」
ディヴィーナは悲しそうに肩をすくめた。
「彼女に出来るのは、はただ人間を創りだすことだけなの。彼女は彼らに自由意思を与え、それで彼らがしたいようにする。彼女はこのように継続させることも、奪いとることもできるわ。いつの日か、彼らはサゴのように終わりを迎えるわ…、それ以前に彼らが自ら殺し合わなければね。」
「どちらにしても、ドゥランは同じ技術は持っていないけれども、更に進化しているわ。でもそれは使う権利を獲得して使う事ができる人々のみ。アノシイは国民の為に魔術を禁止しているけれども、事業としてある特定の事項の為にそれを使う権利を獲得する事はできるわ。それは技術に関しても同じよ。仮に、名誉や女性、魔術等のために戦いが起こったとしても、互いに傷をつけたり、または他の者を傷つけたりするような技術は使えないわ。」
「法律以外の何が、人々がそれを使うのを妨げますか?」
「何もないわ。君の世界のように。法律はこの様にして色んなものを手に入れることを困難にしているし、彼らは法律を破る者に対してはとても厳しいのよ。」
「もう君は何が食べたいのかわかったのか?」
エドワードは見上げずにディヴィーナに聞いた。
「ええ。」
エドワードは扉を開けてその数秒後ひとりのウェイターが現れた。ディヴィーナが注文し、エドワードが続いて注文した。そして、エドワードは顔を上げないまま僕の分も注文した。実際は、彼が書いたものに従って顔をゆっくり紙に近づけていた。
ウェイターは注文を繰り返して出て行った。
エドワードは扉を閉めた。
「彼らがジェノ期について話すとき、それらは2つ目を意味する、そうだね?」
ディヴィーナは彼を見た。
「3つ目!あなたはすごい年寄りね。」ディヴィーナは言った。
彼は彼女を無視した。
「君が終えたら、私はそれらを見る必要がある。」
彼女は法律を見た。
「君は弟子でありながら結婚する事は許されていないわ。君の指導者は多くの事を理由に君が学習を修了したり完了したりするのを妨げることができるわ。」
「あなたはすでに弟子の指導を中断したことはありますか、エドワード?」
「それは私の名前ではない。私は一度だけ弟子のうちの一人に思い切ったことをしたことがあるが、私には他に選択肢がなかったのだ。私は彼を牢獄のなかで教えることはできなかった。」
僕は目を丸くした。
「彼はどんな法律を破ったのですか?」
「どんな法律を破らなかったの?」ディヴィーナは聞いた。彼女はさりげなく僕のほうに身を乗り出し、僕の心臓は鼓動した。
「彼は世界を征服しようとしたのよ。実際のところ、もし私とキロが彼を倒していなかったら彼はできたかもしれないわ。」
「彼を倒した?」弱く聞いた。
「私たちは彼を探し出して彼の防御を破壊し、彼の精神を崩壊したの。キロはそれをひどく嫌がったわ。キロはカーメを地球から救出したの。カーメがまだ6歳のときに気の狂った男が彼を誘拐し目の前にいた彼の両親や姉を殺害したの。彼はその小さな男の子に虐待をしていた。キロはカーメが11歳のときに出会ってこちらに連れ戻したの。彼はとても強力だったけれどとても不安定だったし、すでに良心を失っていっていたわ。キロは彼を救おうとしたけれど、もうすでに手遅れだったの。16歳で少年はカンジイで終身刑を宣告されたわ。」
「彼の事を悪者のように言うことはやめてくれ。」エドワードは言った。
彼はやっと顔を上げ、彼の表情は苛ついていた。
「彼は善人だったが、何が正しいか間違いなのか分からなくなるまで拷問されたのだ。唯一彼が傷つけたかった人は、彼ができる限り最悪の方法で殺す権利のあるあいつだけだった。」彼は仕事に戻った。
「あなたは彼がそいつを殺そうとしたのを覚えている、そうでしょう?」
「彼が手を下そうとしたとき、泣きながらそれを阻止しないように懇願した。せめて君に成功するだろうと思う弟子がいれば、君は理解できただろう。」
「私は常に弟子たちを信じてきたわ。」彼女は侮辱された感じで言った。彼は彼女に対して眉をひそめた。
「二人とも?君が言っているのは、あの6日間いたやつのことか、もしくは不可思議に姿を消したやつのことか?彼の身に何が起こったかの噂がある。」
そして彼らはまたスド語で口論していたが、今回、彼らは怒っていた。
約10分後、扉をノックする音がした。エドワードとディヴィーナは瞬時に何事もなかったかのように振る舞い、エドワードは扉を開けた。ウェイターが大きな料理のお皿を持って戻ってきた。給仕された後、僕には一枚のお皿と飲み物と小さなスプーンがあった。僕のお皿には焼かれたような三枚の大きな厚切り肉があった。エドワードのお皿にも同じものがあった、そしてディヴィーナのお皿には様々な違った種類の食べ物があった。
エドワードが扉を引いて閉めるとすぐに僕は喜んでスプーンを遠くへ押しのけ僕の料理を取った。エドワードも同じようにしたが、ヨーキーを食べていた時にしたのと同じようになにかをつぶやいた。その当時、僕は気づいていなかったが彼はそれを船でもしていたことに気がついた。
「エドワードは何を言っているのですか?食事をするとき、あなたは何をつぶやいているのですか?」
「ヴィオス デーナス。もしこれが私の最後の食事ならば、最良のものでありますように、と基本的には言っているのだ。私は何年もの間続いた戦争のあった改革前に生まれたのだ。改革中、敵に毒入りの食事を送るのは一般的だったのだ。多くの小さな村々では、人々は最も強力な者たちの手にかかり苦しんでいた。彼らの資源は盗まれ、彼らの娘たちはお金持ちと契約結婚させられ、男たちは戦で戦うのを余儀なくされた。多くの家族がとても貧困で飢えていて毒が盛られているかも知れないという事を知りながら、あまりにも空腹で拒否できず、敵から提供される食事を食べていた。この種の恐怖が最終的に戦争を終わらせたのだが、いくつかの伝統は本能的に普及される。」
「あなたたち二人とも趣味が悪いわ。」ディヴィーナは彼女の奇妙でカラフルな料理を食べながら言った。
僕は彼女が話題をなにかもっと軽いものに変えようとしたのではないかと感じた、そしてエドワードはそれに乗った。
「シンプルな味がいいのだ。あの全て食べられて、何でも食べられるやつだ。」と、言った。
それは面白い、ファストフードのハンバーガーをからかっていた彼を思い出した。肉は僕の世界の美味しい焼かれた肉の味をしていて僕は本当に気に入った。
食べている間、しばらく沈黙があり、エドワードは用紙に記入し続けていた。やっと、彼は僕に最後のページを手渡した。下半分は空白で僕にペンを手渡す前に彼は空間の真ん中を指差した。
「私が見せたようにサインしなさい。」と、彼は言った。
僕はゆっくり、でも正確に記号をサインして彼に戻した。
「よし。」
すると、彼はその下に何か記入して彼の名前をその上にサインした。
ディヴィーナがエドワードの仕事を確認している間、僕らは食べ続けた。
彼女は訂正する事なくそれを彼に戻した。
ディヴィーナの飲み物にどんな物質が入っているのか知ろうと見ていて気がついた。僕は十分な色を見ることが出来れば、最終的には、各飲料に含まれる成分を言えるようになるだろう。おそらくそのようにして確認することを習慣づければ、三度目に毒を飲まないように出来るだろう。
「ディーラン?君はなぜ私の飲み物は輝く緑色なのか言う事ができる?」ディヴィーナは聞いた。
「なぜなら中に植物の物質があるから?」
「そう、それは知っているわ。お茶よ。なぜ君は飲み物を観察していてなぜ他の者にも見えるほどそんなにエネルギーをつかっているの?」
「他の者はそれをみるべきではないのですか?」
ディヴィーナが笑っている間にエドワードが答えた。
「他の人にそれが見えるようにするには大量のエネルギーが必要なのだ。粒子内に閉じ込められたエネルギーはそれを輝かせるので、それを見ることが出来るということは、君がパワーを過度に使用しているということを意味するのだ。」
「もしかして全てのポーションが同じ色をしているのですか?もし誰かが飲み物にポーションを入れたなら、あなたはそれが何か、もしくはただそこにあったものなのか言う事ができますか?」
「ポーションは一般的に材料の集成ですか。ディヴィーナ?」
ディヴィーナはポケットに手を入れ小さな青い瓶を取り出した。彼女はコルクを開けて何滴か彼女の飲み物に注いだ、続いて瓶をもとに戻した。
「これは眠りのポーションよ、ドラゴンを倒すのに十分よ。フィルター。」
彼女は自分の飲み物に眠る為のポーションをいれたのだ!彼女は気が狂ったのかと僕がポカーンと口を開けて彼女を見ていたとき、彼女はただ頭をコップに傾けた。
「これはお茶だ。」エドワードは辛抱強く言った。
「君はお茶がどのような物かはすでに知っているだろう、だったらお茶とポーションと区別し濾過する方法を発見するのだ。」
僕はそのような物をフィルターする方法を知らなかったので、既にフィルタリングする方法を知っている事を指摘しなかった。僕は輝き始めるまで僕のエネルギーを液体全体に流しこんだ。緑の物質はまだそこにあったが今回は濃くて冷たく輝く青と重なり合っていた。
「青だ」僕は言った。
架空の紙を形成する代わりに、僕は柔軟で薄く、透明で粘着性のあるプラスチックのフィルムを形成した。容器の内側のコーティングの周りに成形することは更に容易だった。エネルギーのフィルターが上り始めたとき、水は容易に排水した。その一方、緑の輝きもプラスチックにも留まろうとした。僕はそれを強制的に移動しようとはせず、ただゆっくり動かした。僕はポーションの粒子はお茶のよりもっと重いのではないかと想像した。明らかに、緑の輝きは水とともにゆっくり流れ始め、青は更に濃厚になったので、これはそれらを分離する為の正しい方法だった。
エネルギーはゆっくり動き始め、僕の頭はガンガンし始め、続いて僕の目は痛み始めた。睡眠導入ポーションが僕の魔術を通じて僕に何らかの影響を与えていた。もちろんディヴィーナは僕のレッスンを複雑にするために何らかの方法を使うに違いない。女性が男性の仕事を困難にすることができなければ、何を楽しみにするのだろうか。
紙で作業するより更に難しかった移動や濾過を中断させながら、プラスチックの形でエネルギーを止めた。しかし少なくとも僕はそれが破れるのを想像できなかった。僕は再生呪文の睡眠/覚醒状態に落ちいった。アルファ状態のようだったが、おそらく「ガーディアン状態」であった。どちらにしても、ポーションが僕を打ち負かしている間、半眠状態で魔術を途中で凍結するのは困難だった。
どのくらい時間が経ったのか僕はわからなかった。でも意識が完全にもどる前にわずか数秒だったと感じた。自分がやっていたことに気がつく前でも濾過は続いていた。眠りのポーションは執拗なものだったが効果は大幅に削減した。
数分後で、僕はお茶の中から輝く青い液体の入った小さなボールを引っぱりだしていた。ディヴィーナはすぐ横でナプキンを持っていた。僕は液滴をナプキンへ移し、液体を布に落としながらエネルギーを分散させた。
「とても上手くエネルギーを使用したわ。それに君は素晴らしくコントロールしていたわ。」ディヴィーナは言った。
僕はまるでほめられた犬のような気分だった。彼女に認められたと言うのを聞くだけで僕はとても嬉しかった。
「あなたはエネルギーを見る事ができましたか?」と聞いた。
「透明のプラスチック状に形成しました。」
「もし私たちが試みていたら、見る事ができたかも知れないけれど、いいえ、見えなかったわ。空中に浮かぶポーションの液滴のようだったわ。」
「魔術では、正解も間違いもない。全てが皆にとって異なっているのだ。」エドワードは言った。「言ったように、君は非常に良くやった。」
僕が学んだ魔術を使う為に十分生きたい。
「もう一度公共の場へ行く前に、本について話し合えますか?」
「君はまだ私に君の本を持っていてほしいと思う?」ディヴィーナは僕に聞いた。
「僕が本を守れるようになるまでは。今はエドワードが僕の手助けなしに両方共保護しています。もしあなたが持っていれば更に安全だし、誰も本がガーディアンから離れたところにあるとは思いもしないでしょう。」
エドワードが僕の本を取り出して机の中央に置く間、彼女はそれについて考えた。慎重に、彼女は本へと手を差し出した。僕の心の奥底に存在し、元気づけてくれるこの本は更に熱く、更に強く、そして明確になった。危機感は瞬間的には治まったが、無くなってはいないのは確かだった。彼女は本と取る前にほんの数秒だけためらった。
僕の体は冷たくなり空気が僕の肺から強制的に外へ出た。僕の肌は締め付けられ、僕は呼吸できずに全て暗くなった。