突然な重力の引きを感じるまで、僕とロネスはあまり話す時間が無かった。暗い廊下が更に暗くなり、ロネスは僕を心配して呼んだが、暗闇が全てを呑みこんだ。暗闇が過ぎて消えてなくなるまで、僕は人知を超えた大量の時間が過ぎる間、途轍もない圧力を感じた。僕のビジョンの大半が起こる部屋の中に僕はいた…。そして、僕の前、数メートル先にヴレチアルが立っていた。
ありがたいことに、ロネスは何処にもいなかった。彼はもう1回亡くなっているのだ。
「ディーラン マルクス カーター、または、ディーラン レイド トカ ヤトゥヌス・タイ。」
彼のオーラを強烈に感じていないので、僕の体は無意識の間にこの場所に充満している高レベルのエネルギーに順応しているのかも知れない。ビジョンの後だとしても、彼と2人きりになるのは恐ろしかったが、ビジョンでは彼の注目の的は僕ではなかった。
「あなたは僕のことを知っているようですが、僕もあなたのことを知っています。」
「お?お前はもしかして私をヴレチアルだと思っているのではないか?」
「そうですね。」と、あまり驚かずに言った。
「良いね。お前は正しいかもね。さ、続けよう。若者よ、お前はどうやって死にたいのか言ってみよ。」 と、彼は何気なく聞いた。
それは答えやすい質問だった。
「年老いて。」
「お前はかわいそうな子だ。それは、お前が本を受け入れたときに放棄したことだ。お前には年老いて死ぬことが出来ないの。それで、今どうやって死にたい?」
僕はそれについて考えた。僕はせめて今、彼に出来ないことを考えなければならなかった。
「僕は…、600人目の息子に、もう準備が出来たと伝えた夜、眠っている間に穏やかに死にたい。」
彼はため息をついたが、辛抱強く笑った。
「お前を殺す。しかも、今殺す。良く聞け。どのように死にたい?」
「あなたはなぜ僕を殺すのですか?」
「お前が私を恐れないし、恐れようともしないからだ。私はみんなを満足させたいのに、お前はそれさえも、望んでいない。」
「それは、僕が選択したことです。僕には自由意思があり、それが何だとしても、僕が嫌だと思うことに憤慨したければ、憤慨する権利があります。僕は不幸かも知れないが、幸せでもあります。僕の人生には良い時も悪い時もあります。それが面白いのです。もし自由意思が無ければ、この世で生きていく理由が1つも無くなります。人々は生活を楽にするために色んな物を発明し、色んなものを構築するのです。もし彼らが満足してしまったら、何かをする励みが無くなってしまいますし、彼らはただ寝ているだけで死んでしまいます。」
「お前が満足しているなら、生きる理由など必要が無い。私は人々を、彼ら自身に任せて放置しないし、それを維持していく。」と、言って彼は何か考えて眉を上げた。
「私が何を言いたいか、見せてみよう。」
僕が止める前に、つまり、どっちにしても止められるわけではないが、全てがぼやけた。
僕は幸せも、悲観も、恐れも何も感じなかった。僕はただそこにいた。そこにいるだけで十分良かった。何ともなかったが、良くも悪くもなかった。僕空腹も寒さも筋肉痛も感じなかった。何も面白味が無く、つまらなくもなく、色は見分けがつかなかった。そのうつろな虚無は、そうなったときと同じくらいの速さで去って、自分が本当に感じていた恐怖と絶望で溢れた。彼はまるで勝利したようにニヤリと笑った。
「さて、そっちの方が良くなかったか?」
「いいえ。正しくないし、真実でもない。」
「それは関係ない。お前は気にしなかった。私の世界は幸せになる。成功したコミュニティーが存在する。誰も強い痛みを感じたり憎しみや孤独、悲観などの感情を持ったりしない。人々の家族や仕事の役割は彼らのために合理的に選ばれるので、間違いをおかさなくなる。戦争も起こらない。人々は彼らを保護する厳格な規則に従い、誰も喉が渇いたり餓死したりホームレスにならない。天候は太陽からの放射能や地震、竜巻などの地震災害の恐れがないように厳しく制御される。」
「私は人間の本性を削除することが出来ないので、私が地球を取り上げたら、人間は皆同じになる。それで、他の人が自分とは異なっているからといって避けることが出来なくなる。サゴに関しては、彼らは常に最善を尽くそうとしていて個性を優先するので、彼らから個性とプライドを奪い、コミュニティーを与える。彼らを同じ統治政府と宗教の元で統一する。彼らは私を強力で厳格で公平な神として恐れるだろう。」
「世界が統一されるので、言語は1つのみ。色、香り、味などは、貪欲さやえり好みすることを引き起こすから必要ないので削除される。味などが無ければ、人々は自分の体に必要な物だけ食べるようになるので、痛みも感じなくなり、運動するので健康は簡単に手に入れられる。」
僕はため息をついた。
「それが上手くいくことは絶対にありません。僕はあなたが何しようとしているか知っているのか、心配すべきでもない。」
彼は眉を上げた。
「神を侮辱するのは良くないぞ。それで、お前はなぜ私の計画が上手くいかないと思うのだ?」
「まあ、僕はサゴの事を言えるほど彼らの事は知らないし、その他の種族のことも知らないが、僕は人間をよく知っている。僕がそうだからね。僕たち人間は、最も尊敬できる賢明な種族ではないし、頑固だし、暴力的です。」
「そして、僕たち人間には、傲慢・貪欲・邪淫・憤怒・貪食・嫉妬・怠惰の七つの大罪というものもあります。これが人間の定義です。もちろん、そこに気づかいや愛も挿入されます。僕たちは感情なのです。僕たちは、あなたが取り除こうとしているものなのです。」
「キリスト教という宗教は、人の手によって殺された神の子と称される人を崇拝します。彼らはその人の死が彼らをより良い人にしたと信じ、その人の死を祭ります。あなたは、誰かのために死ななければヒーローではありません。人々を助けるために割り当てられた人たちは、自分自身だけに利益をもたらすようなことをし、彼らに頼る人々がどれだけ傷つくか関係ないと思っている。それは、ただ1つの理由から起こるのです。彼らが人間だからです。あなたは、人間が人間らしくあるものを取り上げながら、それが成功しているとは言えません。残ったものが何にしろ、それを人間だとは言えないからです。」
彼は混乱しているようだった。
「お前は人間の味方をしているのか、していないのか?私には分からない。」
「それに、ヴィヴィアンのような人もいます。自分の人生を人のために費やす人もいます。人間は頑固で、その大半が一生の間、自由やプライド又は愛のために頑張って努めています。つまり、愛は偉大なのです。人々はそれのために生き、それのために死にますし、時にはそれのために殺します。彼らは自分自身を愛し、猫や犬、車、そしてお互いを愛します。良いことや悪いこと、僕たちが感じることは、僕たちを死に至らしめるかもかも知れないし、生きる理由を与えてくれるかも知れませんが、僕たちの物なのです。僕たちの感情、僕たちの人生と僕たちの権利。あなたはそれを取ることが出来ません。」
「地球の本物のガーディアンの様な話し方だな。」
僕は振り返り、後ろにロネスが立っているのを見た。
「でも、あなたは人間についてもう少し楽観的であってもいいと思います。」
「僕は母と母無しで育ちました。それでも、人間については、どんなことでも感じることが出来ます。」
「やあ、亡きノクォディ。今はちょっと忙しいのだが、お前の子との用事が終わったら、喜んでお前と話をしよう。」
「本当のことを言うと、あなたが私たちの邪魔をした。私たちは何かの最中だったのだ。」と、ロネスが言った。
彼も僕と同じ様に暗黒の神を恐れていなかった。僕たちの本能が異様なのか、2人とも愚かなのか。ヴレチアルは眉を上げて、考えていた。
「ああ、そうだったな。どうぞ、続けるがよい。」と、彼は言った。
ロネスは頭を振って僕の方を向いた。
「私は君のガールフレンドのヴィヴィアンについて話したかった。彼女は君には良くない。」
「なんですって?1、彼女はもう僕のガールフレンドではない。2、彼女は聡明だ。3、あなたは彼女を見たのですか?特にあの赤いタンクトップを着ているときに。」
「彼女は迷惑だ。彼女は学問的に賢いが、それだけだ。その辺には彼女以外に、彼女よりももっと美しい子が大勢いる。君が少し待てば、彼女たちが君を見つけてくれる。彼女たちは君の賢明な知性に引かれて…。」
「あなたは、僕を殺すのか何をするつもりなんだ?」と、遮って、ヴレチアルに向かって言った。
「お前は私のやり方を受け入れて私を恐れるのか?私がやっているのは、全ての世界を私の支配下で統一することだ。戦ったり、痛みを感じたりする理由は無い。」
「知っています。あなたは戦争をなくして、恐怖や殺人もなくす。あなたがやっていることは間違っていませんが、正しくありません。」
ヴレチアルは邪悪ではなかった。彼は別な観点を持っているだけ。
「正しいとか間違っているとかではない。ただ意見があるだけだ。他の者の意見よりも、私の方が一番重要なのは、私が他のみんなよりパワーがあるからだ。私がお前に取引を提案したらどうする?私がもう一人のガーディアンを行かせてお前がお前の魂を提供すると言うのは、どうだ?」
「あなたは僕が何と言うか知っていますよね。あなたは神なのですから。」
「いいだろう。でも、私はお前自身に言ってほしいのだ。お前の仲間たちのことを忘れないでおくのだぞ。」
クソ。
「何…、僕の魂と引き換えになんだって?それで僕に何をして、僕は何をすればいいんだ?」
「ディーラン、君の魂はキロの命よりも大事だ。」と、ロネスが言った。
「ヴレチアルが彼の命を取った場合、彼は亡くなって、私たちが行くべき場所へ行くが、ヴレチアルが君の魂を取ったら、君はここに奴隷として囚われる。それは死より酷いものだ。」
ヴレチアルは彼を無視した。
「お前はトミーとクラエルの様になるだけだ。お前は私のサーヴァントとなって私が反対しない限り、自由意思を全うすればいい。お前は本が無くても世界間を行き来できることになる。私のサーヴァントになるから、素晴らしい魔術を教える。」
「考えもしてはいけないぞ、ディーラン。」
「貴様は失礼だな、亡きノクォディ―。お前は私が怖くないのか。」
「私はお前よりも元カノたちの方が怖かった。もちろん言い過ぎではないけれど、私は常に強い者の様だった。」
そこで彼は再び女性たちのことを話し始めた。
「それ以上に、私はまだディーランの父親だから、私がまだ成長過程にあった頃のルールによると、彼の魂は彼が結婚するまで私のものだ。それに、私はその彼の可愛い顔でお金を沢山得ることが出来るかも知れない。」
僕はため息をついた。
「私はお前から買い取ることを提案してもいいが、お前は売るはずがないし、私は金貨代わりに使えるものが無い。なので、彼自身が彼の魂をくれるか、私が彼とお前を殺すことになる。お前が私を恐れないが故、お前を破壊してやる。しかし、私は親切なので、お前に選択肢を与えよう。お前は先に逝きたいか、それともお前の息子のことを先に片づけるか?」
「彼にかまうな。」と、僕は要求した。
「あなたの愚かなサーヴァントがもう彼の命を奪ったんだ、そっとしておいてください。」
「お前とお前の師匠と父親は近々一緒にいることになる。心配するな。私は今お前を殺して、2人を死の世界へ送る。私は今慈悲深い気持ちでいるので、お前はラッキーだ。」と、彼は言った。
すると突然深くて起こるだろうと期待していたことが起き始めた。彼が変化していたのだ。あまりにも微妙だったので、彼が意思決定をするのを邪魔するのに十分だった。
「あなたは4つの世界にあなたを恐れる大勢の人がいるのに、なぜあなたは僕の恐れを必要とするのですか?」
「私の支配下で統一するのが目的だからだ。私は誰一人忘れて残すことは無い。そうでなければ、バランスが取れない。お前は私を恐れるか、命を落とすかのどちらかだ。
彼は繰り返していた。僕は止めることも出来る。僕は他の者を助ける方法を見つけられるかも知れない。
「ディーラン、私は消えかかっているので、もうこれ以上ここに留まることが出来ない。」と、ロネスが言った。
「なぜ僕は他の世界に行って生きることが出来ないのですか?」
「私がこの世界を引き継ぐ時にお前を殺す必要があるからだ。」
「では、僕はせめて最後の食事ができますか?それか、最後の祈りとか?それか、最後の願いとか?せめて有名な最期の言葉を手に入れられますか?僕はバッグの中に数日前に書いた最後のお別れの言葉を書いたものを持っています。30分以上かからないと思います。」
「お前は私をバカにしているのだな?」
「絶対に。」と、答えた。
「あなたは、ただ人々を悪いことから解放しようとしているのではなく、愛や喜びも排除しようとしている。なぜ貪欲と憎しみを排除しようとはしないのだ?」と、ロネスが聞いた。
「この様なある種の特徴の民は清めることが出来ない。この宇宙では全てが絡み合って繋がっている。例えば、人や物に対する愛は貪欲や嫉妬を引き起こす。そう言った組み合わせは、神さえも制御できない。それに…、」
彼は止まった。
彼の瞳は鈍くなり、彼は一瞬痛みを感じ、自分のこめかみに触れた。リラックスすると、彼の瞳には憎しみがあった。彼は突然右手を挙げ、手のひらから黒い火が出てきて、僕はそれをよける暇さえなかった。僕は驚いて怖さで固まったようだ。するとロネスが僕の前にいた。黒い火は彼の実在しない体にあたって、彼は中から外へ焼けはじめた。彼の皮膚や服がバチバチと赤く光っていた。
「ダメだ!」
僕の唇から叫び声が出て僕は彼のところに達するところだった。彼が有体ではないという事実を知っていたので、僕の手が本当の皮膚に触れたときには、驚いた。彼は滑り落ち、僕はそれを掴んだ。どのようにして彼に触れられたのかは関係なく、ただ、僕にはそれができた。
「ダメだ!」と、僕は唸った。
「まだ行ってはダメだ。まだあなたのことが知りたい。」
彼は微笑んで、僕の頬に触れた。
「君は私の事を知っている。君は素晴らしい若者だ。」彼は呑み込むのに苦労した。
「君にあることをしてもらいたい。」彼の声は弱っていた。
「何を?」炎は彼の胸にあたっていた。
「キロに言って欲しいことがある…、彼は…、非常に情熱的だと。」
僕は驚いて瞬いたら、彼は再び微笑んで、同じくらい緊張した。
「それは彼を狂わせる。息子よ、私はまた君に会いに来る。」
「ええ、また後で。いつでも来て下さい。」僕は他に何を行ったらいいか分からなかった。彼は僕の父親で、彼と知り合ってまだ1時間も経っていない。彼はまた微笑んだが、多分喉まで達した火傷の痛みを飲み込むためだった。僕が触れている分には熱くなかったが、彼の皮膚は乾燥し、灰の様に剥けて行った。僕は彼の瞳の中の温かみがゆっくり消えていくのを見て、僕は僕たちが目を閉じた瞬間から、僕が築くのを恐れていた絆が再建したことに気づいた。僕の心の中に空虚さは無く、彼は少し離れてまだここにいると感じた。
彼は僕の父親だった。彼はシオのような卑劣な奴に殺されてしまったので、ディヴィーナは彼をここへ連れてきて僕が彼と知り合うことを可能にし、続いて、ヴレチアルが再び彼を連れて行ってしまった。僕はヴレチアルを見たが、もう怒っていないようだった。この神には本当に複雑な何かがあった。
「いずれにせよ、私たちは本題からどんどん外れて行ってないか?」と、彼は落ち着いて聞いた。
僕は本題が何だったか見当もつかなかった。どうでもよかった。僕は彼を殺したかったので彼が人間であってほしかった。僕は本当に人を傷つけることをしたいと思ったことが無かったが、ロネスは僕の父親でエドワードの兄弟だった。僕にとってこんなに大事な人をどうしていとも簡単に殺せるんだ?
ヴレチアルはため息をついた。
「お前の父親のことは後で悔みなさい。お前は私に魂をくれるのか、それとも私がわざわざ手を下さなければならないのか?」
怒りと共に何かが僕の心をかき回した…、神を罰しなければいけないと言う何かが…。もし僕を引き止める誰かが来ていなければ、僕は何をしていたか分からない。
「彼には何も与えるな。」と、僕の横に突然現れたエドワードが言った。
突然の救済に対する喜びを押さえるのに苦労したが、彼の激しい表情を見たとき、そうして良かったと思った。彼から放出される怒りは僕の血を凍らせた。
「やあ、ノクォディ―。私はお前がいつ私たちのところへ来るか自問していたのだよ。私は少し失望していることを認める。ティアマトはいつここへ来るのだ?」
「私の兄弟の体を破壊し終わったらな。この子は私の弟子だ。彼にかまうな。私とお前はちょっと話をつける必要がある。お前は私の兄弟を殺すためにシオを送り込んだ。」と、彼は言った。
ヴレチアルは微笑んで
「ああ、送った。」
「私は既にシオを殺した。私自身でお前を破滅させたいが、それは出来ない。」
もしシオの死がヴレチアルにインパクトを与えたならば、彼はそれをうまく隠した。僕自身、ディヴィーナが僕の父親の体を破壊していることに心を乱された。僕は突然自分の手で僕の父親を殺したシオを殺していたかったと強く望んだ。そして彼を送り込んだのはヴレチアルだった。僕は2人とも傷つけたかった。
「ではお前はここで何をしているのかね?」
「私の弟子を守っているのだ。」と言って、僕を見た。
「君はロネスの目と同じ目つきをしている。戦士の目つきだ。君はヴレチアルを殺したがっている。そうだろう?」
「はい。」僕はまだ震えていた。
エドワードは頭で合図をした。
「君には出来ない。ヴレチアルは非常に強力で、彼は君の戦いには含まれていない。」
彼がそうであると期待されたように賢明な人の様に聞こえた。彼は僕の師匠で伯父でもあった。僕は彼を信頼した。ロネスは僕の父親だが、彼はエドワードの双子の兄弟だった。僕は激怒していたが、エドワードの苦痛は更に深かった。
「分かりました。」と、僕は言った。
「よし。」彼はヴレチアルの方へ振り向いた。
「お前は混乱させている。宇宙はバランスに依存している。それは、お前と同じくらい強力な何かがあって、それはお前と戦っていると言うことだ。お前も、お前に対抗する力も、人々には良いものではない。」
「私は完璧にバランスが取れている。人々に良いかどうかなんて、何がお前にそう判断させるのだ?」
「私が民だからだ。ディーランも民だ。私たちは私たちの世界で民と共に暮らしている。お前はそうではない。お前は痛みで泣いている少女を見つけると、彼女の痛みを感じる能力を取り除くことを申し出る。どうして彼女の問題を取り除こうと申し出ないのか?」と、エドワードは聞いた。
ヴレチアルはエドワードの話を聞くために落ち着いて座って考えた。
「私のやり方の方が手っ取り早い。どうして私の方法よりもお前の方法の様が良いのだ?」
「あの小さい少女がそうだった。お前が信じないなら、彼女に聞くがいい。」と、エドワードが言った。
僕は会話についていけていなかったが、彼らはトミーの事を話しているようだった。
「まあ、私にはそれが良くできないと言うのだよね、そうか?お前は彼女の記憶を取り払ったのか。」
「彼女が再スタートできるように、そうした。ディヴィーナは彼女に感情を返し、永遠の命を取り除いた。今彼女は自由だから、彼女の後をつけまわすな。」
「私はそうしようとは思っていなかった。でも、私は長年かけて彼女を私の思い通りにしたので、おまえがそれをあまりにも早く取り除いたと言うのは非常にイライラさせられる事態だ。お前が殺していなければ、私はシオも破滅させる予定だった。非常に失望した。私はお前を殺してもいいが、もったいない気がする。お前が私のサーヴァントの2人を取り上げたので、お前が私のサーヴァントになれば公平だと思うが。お前は私を失望させると同時に楽しませてくれる。いずれにしても、お前の弟子は死ぬ。お前に彼が守れないのは残念だ。」
「私はまだ彼を守ることを怠っていない。おっと、それともう1つある。私がここにいるのは、ディーランを守るためだけではない。私はお前の気を逸らしているのだ。」
「何のためか、聞いてもいいか?」と、ヴレチアルは笑った。
「私のためよ。」
ティアマト
このように物事が運んで申し訳ないと、私が言ったとすれば、それは控えめに言っただけだわ。私が触れた全ての物が破壊され、私が愛したものは全て失われていたし、一度意味を成した全ての物がとても間違っていた。私の兄弟たちは、権力が全てだと思い、彼らは自分たちが創りだした存在よりも優れていると思っていた。正直なところ、私たちはエンターテインメントや風景のために生き物を創り始め、その後、お互いに競い合うようになった。私は末子で、最も異なっていたので、私の兄弟たちは私が最も弱いと信じていた…一番上の兄以外の全員が、そう思っていた。ヴレチアルは私を奨励し、私をどの兄弟より優れるように教えてくれた。宇宙がまだ若かった頃、彼はそれの中にある美しさを見ること教えてくれた。各神が世界を創りだしたとき、私は急がなかった。私は素晴らしい生物や緑のある最も美しい世界を望んでいた。私はいくつも間違いをおかしたけど、兄はそれを笑い飛ばしてくれた。
兄弟たちの大半がヴレチアルを憎んでいた。彼らは、彼の権力が間違っていると言った。エロノは、世界間の扉を閉じ、その代わりに本を創ることがいいアイデアだと思っていた。いくつかの有害生物が世界から世界へ渡り歩くのを覚えてから、彼は私たち全員を説得した。
ヴレチアルが私たちの兄弟を攻撃した時、私は打ちのめされた。最初、私は一番上の兄がまさかそのようなことしたなんて、信じることを拒否したけど、彼に打ち明けられた。それで私は2度と私に話しかけないように言った。私の兄弟たちは彼を追放し、彼が統治する2つの世界から出られないようにした。アヴォリは私の世話をしたもう1人の兄だったけど、彼はもう誰にも会いたくないと言った。彼は裏切られたことに酷く傷ついた。
私はヴレチアルに2度と話しかけないでと言ったけれども、彼を監視し続けた。彼は自分の考えに毒されて変わってしまった。それは私が生きるためにサゴの体を創ったときだった。私は肉体が私の力を弱くしたけれども、私は権力よりも美しくて良い‘命’というものを発見した。
それに関しては、私も変わってしまい、私の兄弟からして見れば、私は弱くなってしまったように見えていた。私が自分の自身のガーディアンに恋してしまったとき、それより恥ずべきことは無いと思った。でも、私は間違っていた。
全ての時を通じ、強力な人々について、マスター魔術師の予言や噂があったけれども、それらは神々まで届かなかった。空虚の古代獣が新しいノクォディたちに囁き始めたとき、私たちは耳を貸さなかった。全てのガーディアン達を圧倒することができる子供なんて、ばかげたな考えだった。
ロネスの末子は、生まれた瞬間に全ての物ごとの構造に影響を及ぼした。彼は信じがたいものだった。私はすぐに彼が何なのか疑念を持った。彼が生まれた夜に起こった彼の部屋での火事、私の兄弟たちは宇宙のバランスがその小さい子供の命を終わらせるだろうと思っていた。彼らはその子が脅威になる前に死んでしまうと思っていた。
ロネスは殺され、私はそれを防ぐことが出来なかった。サゴの体で満足する生活を送っていて、私は十分な速さや鋭敏さがなかった。そして、私は彼の息子と恋に落ちることになった。
自分の感情と愛は、この自分の身体のせいにすることも出来るが、私は単に現実の生活に適応してしまったのだという可能性の方がより高い。それが唯一、この人生を諦めることをいとわないことへの説明かも知れない。私を愛してくれた唯一の私の家族を殺すか、私の新しいガーディアンのために死ぬ覚悟が出来ていた。私の兄弟たちが私について言っていたことは正しかった。
* * *
外国に到着するのは、海の真ん中で沈むのと同じだった。この体は溢れるエネルギーで溺れそうになるだろうけど、私の存在はそれを飲み込むことを望んでいた。そう、パワーは野生的で制御不能だったが、私は神だった。
ディーランは、私と私の元ガーディアンの身体を乗っ取っていた蛇の間に立った。私が衝撃と魔法の流れに適応しようとしている間、ディーランはロネスが本当に彼の父親だったと知らなかった。私はたとえ僅かな間だけだとしても、彼らがもうすぐ再会するという事実に焦点を当てた。ヴレチアルはこれまで以上にうぬぼれ、非常識に到着した。ヴレチアルがディーランの腕を掴んだ時、私は怒ってディーランにかまうなと言ったが、私は私の一番強い兄に対して何もできることはなかった。彼は私の腕を掴んで閃光の中へいざない、私たちは手の込んだ寝室へと行った。
部屋は暗かったが、物がいっぱいあり、大きなベッドと壁から壁へと本棚があった。私はバーガンディーサテンの毛布で覆われた柔らかいベッドに座って、躊躇している兄を見た。
「お前はここにいなさい。」と命令した。
彼はかつてのようなところは何もなかったが、ただ非常に強力だった。
「いつまで?」と、聞いた。
「永遠にだ。お前はここにいて、私が兄弟たちを遠ざけて保つ。いずれにせよ、お前だけが私のお気に入りだった。お前は私が他の者たちを制圧している間、私の副将としてもいい。」
「なぜ私がそうすると思うの?」
「お前は私の妹だからだ。」
「でも、あなたは私の兄ではないわ。あなたが2つの世界を統治して得た権力は、あなたの心を壊してしまったわ。なぜあなたはそういうことをしたのですか?」と、聞いた。
彼は微笑んだが、幸せそうな笑顔ではなかったが、私は突然、私だけが家族に何かを隠しているのではないと分かった。すると、彼は閃光の中に消えた。
私は構内の周りを感じた。この構造は半分人工物と半分は自然に出来たものだった。シオがディーランをキロの方へ連れて行っていた。トミーとクラエルは一緒に歩いていた。ロネスに会うためにはディーランに一人になってもらわなければいけなかった。私はディーランがシオに対処できると分かっていたけれども、キロがディーランの方向へ向かい始めた。私は彼らを離しておく必要があった。キロが彼の弟子のところに行きついたら、彼はきっとディーラン側につかない。私はキロを彼の兄弟から遠ざけておくのは後ろめたかったけれど、ロネスは野生エネルギーに相手に十分な問題を抱えていた。キロのエネルギーが彼を遠ざけてしまう。それに、キロは他にやらなければいけないことがあった。
「キロ、待って。」私は彼の心にメッセージを送った。
「今はその時ではないわ。ディーランは自分で何とかできる。あなたはクラエルの後を追って、彼はディーランの本を持っているわ。あなたは後でシオと会う機会があるわ。私の事を信じて。」
キロがクラエルの方向へ言ったので、私は安堵してため息をついた。クラエルは今一人で私の方へ向かっていた。私は彼が必死に私と話す必要があると感じていた。幸運なことに、ディーランは迅速にシオに対処することが出来た。
私はキロがそれについてぶつぶつ言うと知っていた。
「さあ、今言ってシオを倒すのよ。」と、ディヴィーナが言った。
「私はまだ本を手に入れていない。」と、彼は予想通り不満そうに言った。
一瞬、彼の感覚を分からなくしようと思ったけれど、彼がこれから直面することには、全力を必要とする。
「分かっているわ。後にして。今があなたの兄弟の敵を討つチャンスよ。」
彼はシオの方向へ向かい、ディーランから離れて行った。残念ながら、ディーランはトミーの所へ直行した。
「ディーラン、あなたは戻らなければいけないの。ディーラン!」
反応が無かった。ディーランには私の声が聞こえていなかった。多分、ロネスのせいだと思った。大丈夫。私はディーランのところでロネスの存在が大きく育って行くのを感じ取ることが出来た。私の若いガーディアンは守られていた。
しかし、キロもディーランが邪悪な少女といること感じで、弟子のところへ向かって戻ろうとしていた。絶対に最悪のタイミングだった。
「だめ!ディーランが対処しているわ!彼に任せて!」
「彼は私の弟子だ。そいつに彼を殺させはしない。」
愚かで、頑固なガーディアンは決して人の言うことを聞かない、彼のいまいましい兄弟と全く同じだわ。
「彼を信じて。」
「信じるか否かの問題ではない!彼は訓練を受けていないに等しい。タイミングがいいとか信用するかなどは関係ない。彼は私の弟子だし、私の兄弟は私が弟子を守っている間、もう少しの間不安に休んでいても構わない。」
「彼はそれに対処しているわ!今あなたが手を出したら、余計にややこしくなるわ!放っておきなさい。彼女はせいぜい彼を引っ掻くくらいしかできないわ。信じて!」
私は止まった。
「なぜ?なぜそうしなければならないのだ?」と、私は聞いたが、私には答えが無かった。
「これが終わったら、君は何故すべきことを知っていて、どうして君の事を信用しなければいけないのか説明してもらう。」
「これが終わったころには、あなたも知ると思うわ。」
それは確かだった。今、私の秘密はあまりにも大きかった。キロはロネスを殺した奴に向かって進んだ。ちょうどその時、軽くドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ。」
クラエルが入って来て彼の後ろで静かにドアを閉めた。彼は前置きなしに、
「あなたがヴレチアルを倒す確率はどれくらいですか?」と、聞いた。
「ありえないと思うわ。」と、正直に答えた。
「あなたの友人たちは?彼らはあなたを助けることが出来ますか?」
「更にありえないわ。君は私にヴレチアルを倒してほしいの?あなたは彼に立ち向かうことをいとわないの?」
彼はため息をついてドアに寄り掛かった。
「彼は僕から妹を奪った。僕はずっと彼のアイデア、つまり、全員にシンプルで平和な人生を与えると言う計画は良いと思っていた。でも、もし彼が僕の妹にやったことを他の者たちにしようとしているのならば、彼は間違っています。僕は彼に負ける覚悟をしていますが、何もしないでいるわけにはいきません。ロネスは私の友達でした。」
私は最後の部分を信じた。私は彼の声にあこがれを聞いた…。ロネスは素晴らしい人で、皆に正しいことをするために忠誠心と勇気を触発した。
「私に本を渡しなさい。」と、私は言った。
彼は頷いて私の本を取り出した。
「僕はもう1冊を持っていません。ヴレチアル自身が取り上げたのです。ともあれ、僕は手に入れることが出来るかも知れません。僕はヴレチアルが自分の2冊の本をしまっている場所を知っています。」
私は数分考えた。他の者を監視し続けたのは良かった。ディーランとロネスは本の方へ向かっていたが、彼らはまだ先にシオといるキロと出会うことになる。
「ええ。でも、あなたには先にやってもらいたいことがあるわ。あなたにディーランをキロから遠ざけてほしいの。彼を途中で止めて。私自身で本を取りに行くことは出来ないわ。ヴレチアルは直ぐ私のことに気づくわ。」
「分かりました。では、私は先ず若いガーディアンをもう1人のガーディアンから遠ざけて、次に本を手に入れます。」
「ええ、君は出来ると思う?」
「やってみます。」と言って、彼は出て行った。
ロネスの死を防ぐことが出来なかったのも不思議ではないわ。常に3人の追跡をするのは難しい。それに、この身体は私の動きをのろく、能力を鈍らせる。
私はディーランとロネスがクラエルと戦うのを見ていた。クラエルがただ彼の気を逸らすために行動していると知っていながらも、彼がディーランを傷つけるたびに彼に対する怒りが増した。ディーランが勝つのは知っていたが、それでも、怪我するのを見るのは嫌だった。そして彼らを見るのを止めて、兄弟の敵討ちを終えようとしていたキロの方をみた。
私は彼に彼の弟子が無事に対処できたことを伝え、私は邪悪な子供の方へと向かわせた。キロはすぐディーランがトミーを無力にして残していた場所に着いた。彼の考えは渦巻き、私は彼が正しい軌道に乗っていることを知っていた。
キロが彼女のことを助けるように頼んだ時、私はヴレチアルに邪魔にされないことを願いながら閃光と共に部屋に現れた。きっと私にあの部屋に滞在しろという意味で言ったのではないと思った。不死を少女から吸い出すのは私にとってはとても簡単だったが、彼女の自然に反するエネルギー全てと自然な力もほとんど取り消された。
ダークエネルギーが全て取り出されたので、私は彼女を破壊したことになる。ノミナルエネルギーを他の者が壊すのは不可能だとしても、神々はそれを取り消すために、より強力なエネルギーを作り出していた。
「あなたの番よ。」と言って、横のチェストに腰かけた…。
キロは私が誰だか知っていた。私たちは少しロネスと信頼について話し、私たちの仲は、2度と元には戻らないと知っていた。私には、他の神々は持っていない‘友達’がいたので、間違いなく甘やかされて育った。
「私は彼らとよりも、あなたと長い時間を共にしてきたので、信仰を持って対処することを学ぶ前に、信頼することを覚えました。私たちがあのように出会った後は…。」
私は、私たちの間にある信頼を壊さずに、彼に私たちの出会いのことを忘れさせたかった。それは私が誰にも知ってほしくない話だった。
「あなたは絶対にディーランに言わないでしょうね?」
と、聞いた。
もちろん彼は彼の弟子に嘘をつくはずがなかった。ただ、キロ心の片隅では、ディーランがロネスに一番近くて唯一残っていたつながりだと感じていた。キロはまだ彼らがどれほど密接に関係しているか気づいていないかも知れないが、ディーランはまだ成長中で、先々には自分の父親に非常に似るでしょう。
キロが邪悪な子供のことで気を取られていたので、何か悪いことが起きていた。ヴレチアルがディーランを捕まえた。
「何かよからぬことが起ころうとしている。あなたの弟子をチェックして。」と、私は言った。
「ディヴィーナ!私を彼がいる所に送れるか?」
「ええ、ディーランを守るのよ。でも、あなたにはヴレチアルの気を逸らしてもらわなければならないわ。」
私は彼にヴレチアルのエネルギーのせいで時間のゆがみが生じることを伝える努力をしなかった。数秒かも知れないが、半時間かかるかも知れなかった。
キロを閃光と共に移動させた瞬間、クラエルが部屋に飛び込んできた。彼はトミーを見て、それから私をおびえと希望いっぱいの目で見た。
「彼女はもう大丈夫よ。でも、もう不死身ではないわ。彼女は成長して、年老いて、彼女の人生を生きて行く…」--- 私は男性の力強いハグで遮られた。
「ありがとう。」
彼は1歩下がって、手をバッグに入れてエロノの本、そしてヴレチアルの両方の本を取り出した。
「ロネスはあなたを信頼していましたか?」と、彼は聞いた。
私は本を受け取るために手を差し伸べるのを思いとどまった。
「彼は信頼していたわ。そして、そのために彼は死んだの。」と、囁いた。
「女よ。僕は彼の死を見届けた。僕は彼が最後に話した者です…、彼は彼の死を悔やんでいませんでした。彼は彼の愛しい人たちを置き去りにすることを悲しんでいましたが、彼は大義のために死んでいくのだと知っていました。もしあなたがその理由でしたら…。」彼は私に本を渡した。
「僕もあなたを信用します。あなたはヴレチアルを倒します。」
私は優しく微笑んだ。
「あなたが奨励しているのは私のガーディアンではないことに驚いたわ。要するに、ディーランはロネスの息子なので。」
私は本題に戻る前の彼の混乱した顔が気に入った。
「あなたが妹と逃げて幸せな人生を送る前にもう1つあるわ。」
「何ですか?」
「人々は何処にいるの?どうしてこの惑星には人がいないの?」
「それは、ヴレチアルが敗北するかも知れないと分かったときに、全ての世界に穴を切り刻んで、彼の2つの世界の人々を別の場所で生きていくようにしたからです。」
私は衝撃を受けた。彼はそんなに強力なの?
「彼はなぜそのようなことを?」
彼は慎重な表情で私を見たが、それはあらゆることを意味していた。続いて、彼はトミーを腕に抱いて、何も答えずに歩き始めた。
「待って。ヴレチアルはいつ敗北するかもしれないと気づいたの?」と、聞いた。もしかしたら私はあまり兄を信用すべきではないかも知れない。
クラエルは私の方に向いて微笑んだ。
「ディーランが彼の目を見たときに、彼の目に恐れが見えなかったときに気づいた。」
* * *
私はエロノの世界と他の世界全てからパワーを引き出そうとしたが、私の世界のみが応じた。私がエロノの世界に繋がっていても、彼のパワーは私が吸い上げるのを妨げた。私は他の兄弟の力を借りようとしたが、誰も応じてくれなかった。
私が持つ力は不十分だったのだ。私の若いガーディアンが何になって、何かをする運命であったとしても、彼には準備ができていなかった。私に残った唯一の選択肢は、ヴレチアルからアヴォリのパワーを取って引き離すことだった。私はその世界を自分のものにしても、破壊してアヴォリが取り戻せぬようにしても良かった。私が彼からコントロールを取った場合、私は多くのパワーを得ることが出来る。それは、私の身体を焼いてしまって、きっと脳も焼いてしまう。
でも、第一に、私は兄に勝利することは出来るか?ディーランの命のためなら出来るかも知れないが、そうすると私の世界も脅威にさらされることになる。私はアヴォリの本を開き、私の最も気楽な兄に謝罪を送った。私は平和な感覚で満たされた。私にはそれが必要だった。
私はただの思考で自分の手首を切り、本の上にかざした。1頁ずつめくり、インクの上に私の血を滴らせた。ようやく、それが終わった。私は空になっていたが、芸術が創造した世界を1つ破壊した。
私はヴレチアルの突き刺さるような怒りを感じ、次にディーランの堪えがたい苦痛を感じた。
私は彼らに注意を戻したが、ロネスの最後の言葉を聞くのに間に会った。私はロネスにはもう時間が無いと知っていたが、彼らにはもう少し時間があってほしかった。
それに、ロネスの魂は死の世界へと届けられようとしていた。それが起こってしまうと、私は2度と連れ戻すことが出来なかった。私は彼をここに捕らえることも、地球かディーラン、または彼の兄弟に拘束することもできる。彼は彼のままで、人々を見たり聞いたりすることは出来るが、見られることも聞かれることもないだろう。でもそれは果たして生きていると言えるだろうか?彼はディーランをとても愛していたが、もし私が彼を逝かせてしまったら、2人が再会できる場合、数千年後になってしまうだろう。賛否の理由は多々あったが、彼はあっという間に離れて逝ってしまった。
決定はなされた。
ディーラン
ディヴィーナがヴレチアルの背後に現れたとき、全てにおいて彼女自身ではないように感じた。彼女は彼女自身に見えなかった。彼女の目は黒1色だった。彼女は危険に見えて、可愛くも美しくもなかった。彼女の身体は明らかにパワーを放出しており、彼女の周りの空気が熱気でパチパチと音を立てていた。彼女の声は不自然に壁にこだまして、制御された怒りのようなものが僕に汗をかかせた。彼女は、わずか数時間前、僕にキスをした優しくて温和な女性ではなかった。
エドワードはゆっくり僕を後ろへ引っぱって遠ざけた。ヴレチアルが座っていた椅子が突然消え、彼は彼女に直面していた。
ヴレチアルは嬉しそうな音を立てた。
「私はお前が他の者が言うよりも優れていると知っていた。お前だけが、いつ動くべきで、いつ大人しく座るべきか知っていた。お前が私の味方ではなくて残念だ。」と、彼は言った。
彼女は手を上げて黒い火を彼に投げつけた。それは彼をのみ込まず、その代わりにとても小さい黒い宝石のシャワーに変った。
「そんなに単純な魔法で私を破壊できると思うなんて、悲しすぎる。お前は、私から世界を1つ奪ったからといって、私を十分に弱らせることが出来て、勝てると思ったのだろうが、それは起こらなかった。お前は世界を2つ破壊したか、自分のものにしたのだろう。」
「いいえ。」と、彼女は言った。
「私たちが公平に戦って私が勝利したら、あなたの世界をアヴォリにあげるわ。」
彼は笑った。
「公平な…、お前は絶対に私の様に強くはなれない。」
稲妻のようで赤く輝く何かがヴレチアルから発射されてディヴィーナに命中した。彼女が回復する前に、彼は何度も、何度も彼女に打撃を与えた。
ディヴィーナには助けが必要だった。ヴレチアルが勝利するなんて許されることではなかった。僕は自分が持っていた全てを出して本へ手を差し出し、それを取り戻した。僕は僕のドゥランとディオスのコネクションを探すために使った。ディヴィーナは暫く激しく苦しんだ後、最終的に崩壊し始めたのを僕は感じ取った。ディヴィーナが攻撃する度にそれは撃ち落され、ヴレチアルが攻撃する度に彼女を弱らせていた。彼女には助けが必要だった。
絶望的な助けの呼びかけと共に、僕は地球の魔法のエネルギーを自分に引き寄せ、そしてそれを直接ディヴィーナへ送った。僕が引き寄せて彼女へ送れば送るほど、その流れは速くなり、僕はディヴィーナに注ぎ込むエネルギーの流れとなった。そして、それは普通のエネルギーではなかった。濃縮されて美しかった。
すると僕は新しいエネルギーが地球のエネルギーに合流して僕の中に入ってくるのを感じた。ドゥランが応じていた。そして、直ぐにディオスのエネルギーも合流した。女神は立ち上がった。そして彼女が黒い火をヴレチアルに投げ、それは真っすぐ彼の胸に当たった。彼は倒れた。
「君は何をしているのだ?」と、エドワードは聞いた。
僕は、話せなかった。今度はディヴィーナが攻撃していた。
僕の中で流れるエネルギーの勢いで、僕は破裂するかと思ったが、後から新しい形のコネクションを感じた。異世界が僕を通じてディヴィーナに力を与えていたのだ。もし出来たならば、僕は気を失っていたかも知れない。僕はエドワードに抱きとめられるまで。自分が熱で壊れそうになっていたことに気づかなかった。彼の皮膚が氷の様に冷たく感じられたが、彼は叫びながら速攻で僕を放した。
「止めろ!」と、彼は叫んだ。
僕はそうしようとした。でも、その流れの勢いが強すぎて、僕には速度を落とすことが出来なかった。僕はエネルギーが自分に入るのをキープしたまま押し戻そうとした。集中するには痛すぎた。
エドワードが再び僕を掴んだ。数秒の間は痛かったが、続いて流れが弱まり、僕の上に氷の塊があって僕の痛みを鈍らせて癒してくれているようだった。流れは水滴となって止まったが、エドワードは僕の熱が下がり始めるまで僕を放さなかった。すると足が立たなかったので、僕は彼につかまらなければならなかった。
今の時点でディヴィーナは全能になっていた。彼女はヴレチアルの方向へ1歩踏み出し、その動きによる静電気の大きな音があった。僕は本当に病人のように感じた。
彼女は右手を挙げ、ヴレチアルは地面へと滑り落ちた。彼の腕はだらりとして目を閉じ、頭を上げたまま膝をついて座った。それについて、彼はとても落ち着いていた。光が去ってしばらくの間、闇しかなかった。
すると、黒火が魅惑的な効果と共に、ヴレチアルの体の外へ流れ出て、室内がぼうっと、うす暗くなった。ディヴィーナの瞳はもはや黒くないと分かるに十分な光があった。彼女の虹彩は赤、黄色で、火と共に輝いていた。ディヴィーナが彼女の魔法をかけている間、ヴレチアルは音1つ立てなかった。
彼が後ろへ倒れたとき、彼からまだ黒火が上がっていた。わずか数秒後、最後の火が上がり、全てを暗闇に残し、消えて行った。すると、悔しいことに、ヴレチアルの体は普通の輝く火に包まれた。それが他の神にとっても恐怖の対象であった暗黒の全能の神の終わりだった。彼の全ての行動の終わりだった。
多分…
ディヴィーナは膝から崩れ落ち、エドワードが引き止める前に僕は彼女のところへ行ったが、彼女のパワーは強力過ぎて彼女には近づけなかった。
「ディヴィーナ、大丈夫ですか?」
彼女は真っ黒の目で僕を見た。
「危ない!」と、エドワードが叫んだ。
「離れなさい。」と、ディヴィーナが言った。
彼女の瞳は僕が後ろの壁に投げ出される前に、コンマ数秒、黄色く光った。僕は目が回るほどの勢いでぶつかり、地面へと滑り落ちた。温かい液が僕の首へと流れた。エドワードは瞬時に僕の横にいた。
「何が悪いのですか?」と、何にも集中できないまま聞いた。
「彼女がヴレチアルに勝利したとき、彼のパワーが彼女の物になったのだ。彼女は2つの世界のパワーを受けるわけには行けないのだ。ヴレチアルの名前を消しなさい。」
といって、彼は去った。
僕の手には本が一冊あったが、僕のでもエドワードのでもなかった。それで僕は開いて出来るだけ集中した。そこには奇妙な署名が一つだけあったので、古代の誰かの物であろうと思った。
「どうやって?」と、聞いた。
僕はエドワードが彼女と話しているのを見て、彼女は再び立っていた。彼は彼女を落ち着かせようとしていた。
「血液。」
それは僕にとって何の意味もなかった。でも幸運なことに、僕の体には意味があったようで、僕の手が自分の頭に行き、血が付いた状態で戻り、その血を署名の上でベタベタと拭いた。僕はその血と署名が消えたとき、幻覚でも見ているのかと思った。
その効果は瞬時に起こった。ディヴィーナを取り巻いていたパワーが消えた。彼女は倒れ込んだが、エドワードが受け止めて、出たり消えたりするのが好きな椅子に座らせた。彼女は頭を後ろへやり、エドワードは素早く僕が立ち上がるのを手伝った。僕は本を手に取ろうとしたが、不可能だった。それは突然、砂となったのだ。僕はそれに戸惑った。
エドワードは僕を自分の方に向けて顔を見るように僕を支えた。
「君は大丈夫か?」と、彼は聞いた。
僕ら揺れないようにしようとしていた。
「大丈夫です。」と、嘘ついた。エドワードはディヴィーナよりも僕を助けていたが、僕は膝から崩れ落ちたが、直立の状態に保つようにした。
「ディヴィーナ?大丈夫ですか?」
彼女はゆっくりと頭を持ち上げてエドワードから僕を見た。彼女は少し揺れて、焦点が合わないかのように瞬きをした。
「あなたは、誰?」と、彼女は聞いた。
僕は後ろへ倒れたが、エドワードは動揺していたが、驚いていないようだった。
「彼はあなたのガーディアンで、私はドゥランのガーディアンです。」
彼女は頭を振って、次に自分自身を安定させようとした。
「いいえ。ロネス…私のガーディアン…。何が起こったの?」
* * *
エドワードは、彼女に何が起こったか説明しようとしたが、彼女は全てに反論した。彼女はエドワードが誰なのか分かっているようだったが、僕が誰だか分からず、ロネスがガーディアンだと信じていたが、彼が亡くなったことについては、問題なく信じた。まるで僕たちの言っていることが完全に聞こえない人に話しかけているようだった。彼女は僕たちと同じ広間、あるいは、現実に居ないようだった。僕自身も集中するのに苦労していた。
僕たちはこの世界が破壊される前に自宅へ帰らなければならないと主張していたが、僕は眠り続けようとしていた。その間に、彼は僕たちをどうにか家に連れ戻しており、僕はほぼ意識が無かった。その後、エドワードの懇願もむなしく、僕は完全に気を失った。僕は彼が一生懸命僕を寝せないようにしていたと思った。でも僕は、気を失ったら目が覚めないと確信していたが、それはどうでもよかった。僕の世界は空虚な闇で閉じ、僕には苦痛と混乱からの脱出が見込まれた。
* * *
僕はディヴィーナの甘い香りで目が覚めた。僕は目を開けなかった。理由は思い出せなかったが、まだ現実に直面したくないと分かっていた。僕はただその快適なベッドで彼女の素晴らしい香りを楽しんだ。彼女は赤い果実やバニラと、なぜか…インドの香辛料の香りがした。
「頭はどうだ?」と、エドワードが聞いた。僕は目を開け、全てが戻ってきた。
僕が頭に巻かれた包帯を触ろうとしている間、泣かないようにして、起き上がらないようにした。僕は自宅のベッド、つまりドゥランのショモジイの森にある家の部屋に居た。ヴレチアルは去って、ディヴィーナは僕の隣で寝ていた。エドワードは部屋の反対側にあるベッドに座った。
「私は彼女が誰だか知っている。君は何が起こったが覚えているか?」と、聞いた。
「ディヴィーナはヴレチアルを殺して、僕は彼の本にあった唯一の名前を消して、彼女は記憶を失った。」と、僕は言った。
「ほとんど。彼女は記憶を失った訳ではなく、少し心を失っただけだ。彼女は二つ目の世界のパワーに耐えられなかった。ヴレチアルがそれを出来たのは、多分彼の心の働き方のせいだったのだろう。他の神々へも、何が起こったか報告されているだろう。君がやったことが、彼女にヴレチアルを殺すことを可能にした。私は君がドゥランの助けを呼んでいるのを感じたし、彼らが協力したのも感じた。君は…、もう2度と自分のガーディアンの能力を疑ってはいけない。今までにないガーディアンの強力さが君にあるのは、その君の助けると言う決意と正しいことを行うという決断力があるからだ。君がどうの様にして死んだ神の名を抹消したのかは、私の理解を越えている。」
「その他に…、何が起こったのですか?」と、僕は聞いた。
「何って、君はそこにいて知っているはずでは?」と、彼は聞いた。僕は頭を振ろうとしたが、悲惨にもできなかった。
「君がディヴィーナとシオと洞窟にいた間、私は地下牢から逃げようとしていた。私は君が残していった少女への道を見つけて、彼女の記憶を消した。ディヴィーナは彼女の不死身の力を奪った。彼女は上にいて彼女の兄と、今夜アノシイへと発つ。私はシオも、だいたい殺した。ヴレチアルはディヴィーナが本を奪うために私たちが気を逸らしていると思っていたが、実際のところ、クラエルが本を奪うために気を逸らしていた。」
それは僕とって何の意味もなかった。
「でも、クラエル…。」
「彼は善人となって、そこに着いた時からディヴィーナと一緒に計画していた。彼がヴレチアルのものだった本を持ち出し、ディヴィーナに渡したのだ。
「ヴレチアルの世界はどうなったのですか?僕は名前を消し…、それはあの世界にどのような影響を及ぼしたのですか?」彼が答えなかったので、僕は彼を見た。
そして彼は、やっと、
「あの世界は…、破壊された。」と、言った。
僕は心臓が胃の方沈んで、胃酸で煮えたぎるように感じた…。僕は世界を1つ破壊した。僕は自分の手を見て永遠に消滅しない血を想像し、涙が溢れるのを止めようとはしなかった。
「もし君がヴレチアルの名を消していなければ、ディヴィーナは地球もヴレチアルの世界も破壊していただろう。あの惑星には行きとし生けるものはいなかった。見たところ、ヴレチアルは世界の破壊も考慮していたようで、私たちが着く直前に全員を他の世界へ移動させていた。」と、彼は言った。
ガーディアンとして、僕は人を殺すこともあるとディヴィーナは言ったが、僕は世界を1つ破壊した。僕は横になり、静かに涙を流した。
「ただよくなるだろう。治すことに集中するのだ。私は出来る限りのことをやったが、脳を癒すには時間がかかる。寝なさい。」
彼は出て行き、僕は静かな中で彼が言ったことを考えた。ヴレチアルは危険だと感じて人々を他の世界へ移動していた。1人の神が本当に悪意持っていたなら、それをする必要があったのだろうか?彼は最後まで自信満々だった。そんなに確信していたならは、なぜ人々を移動する必要があったのだ?もし彼が疑いを持っていたならば、どうして自分を救うようなことをしなかったんだ?
* * *
僕は再び目覚め、頭の痛みははるかに良くなっていたが、僕は1人だった。約10分過ぎた頃、僕はベッドから出てなんとか階段を上がることが出来た。明るい光を取り入れるために玄関が開いており、ドアのところに立つと、エドワードがキッチンの椅子2脚をポーチに持ってきていたことに気づいた。彼はその1つに座って本を読んできた。僕は戻ろうとしていた。
「気分は良くなったか?」
「ええ。」数秒迷ってから僕はポーチに出て、彼の近くの椅子に座った。
「ディヴィーナは何処ですか?」
「彼女は自宅へ帰った。彼女は君がすぐ訪問することを望んでいる。彼女はここを出る前に、ヴレチアルの2つ目の世界の元の主であるアヴォリが、彼の世界が破壊されて喜んでいると言っていた。ヴレチアルが彼の世界を毒していたのだ。アヴォリは彼の力を取り戻し、再建するだろう。ディヴィーナによると、神々は変化を求めている。彼らは2度とこのようなことが起こらないことを願っている。それが君にどのように影響するのかは、彼女さえ言えないようだ。君は起こったことについて話したいか?」
「いいえ。」と、僕は言った。彼はそれを認め、沈黙して数秒経過した。
「ロネスは僕の父親でした。」彼は僕を見るために振り返った。
「彼に聞いたのですが、それについて説明するには少し時間を要します。あなたは知っていたのですか?」
彼は森を見つめた。
「いいや。私は君が彼にそんなに似ているのは、君が彼の子孫だからだろうと思っていたし、私が彼を懐かしんでいるからだと思った。私は、自分の兄弟の子を弟子に取っているとは、本当に思いもしなかった。」
彼は僕にちょっとだけ心からにじみ出るような笑顔を見せた。
「時に物事は単に起こるべくして起こる。」
「では、あなたはそれについて怒っていないのですか?」と、聞いた。彼は頭を振った。沈黙が続き、僕はその情報に安堵したことに驚いた。
「彼はいつの日か僕のことや、どうして僕の母を選んだのか言ったことがありますか?つまり、彼は言ったことが無いと言いましたが、うっかり滑らしたことが無いかと思って。」
「それは、君には言えないかも知れない。ロネスは女好きだったし、彼は不自由しなかった。もし彼が君の母親のことを特に話したとすれば、私には分からない。でも彼はとても注意深かった。彼に子供ができたとき、彼は良い母親になるだろうと思った女性といた。私は君の年頃の子供がいるとは知っていたが、君の母親は彼が子供を預けておきそうな女性ではなかった。地球でマグスは珍しくないので、私は本当に君が彼の子だと考えもしなかった。どうした?」と、彼は聞いた。
きっと、彼が言わんとしていたことに気づいた僕の表情が複雑になっていたのだろう。
「僕には数百人の兄や姉がいるかも知れない。いや…、僕は兄姉たちのベビーかも知れない。でも、それは、あなたが叔父であることを意味します。」
僕たちはただ黙って考え、数秒過ぎた。それは、僕の人生の大半について、全く知らなかった部分だった。
「実際のところ、ガーディアンの子たちは不死身ではないので、彼の子たちのほとんどが年老いて亡くなっている。」
「あなたは自分の子たちが年老いて亡くなって行くのを見なければいけなかったのですか?」と、僕は聞いた。僕の質問は失礼で傷つけるものだと、言ってすぐに気づいたが、気まずい沈黙が重くのしかかった。
「あなたはロネスの仇を打つことが出来ましたか?」と、話題を変えようとして聞いた。「シオがロネスの体を乗っ取っていたので、あなたにとって困難だったのではなかったかと思いました。」
「私はただ、彼を逝かせただけだ。彼自身が死への道を見つけた。私は自分が迷信深い男だと思いたくないが、何しろ改革前に生まれたものだからね。ドゥランには王が自分の兵士たちが戦に出る前に語るおとぎ話があった。君は自分の死から目を逸らすと、君は死の国で安息を見つけることが出来ないと、言われていた。また、人によっては、永遠にそれを追体験するだろうという者もいた。」
「あなたは、シオを彼の死から目を逸らさせましたか?」と、聞いた。彼は頷いた。
「あなたはディヴィーナが彼女の記憶を2度と取り戻さないと思いますか?」
彼はため息をついた。
「君は彼女に恋してしまったのか?」
「ええ。でも彼女は僕のことを覚えてもいません。彼女は僕に恋し始めていると言った。彼女は治るのでしょうか?」
「私には分からない。知っているのは、彼女が強いと言うことだけだ。」
「今回は彼女にあまり近づかない方がよさそうですね。僕は彼女の様に強くないし、彼女を墜落させてしまうかも知れません。僕はいまのところ、重荷に過ぎません。」
「私はそう思わない。私は彼女が成功したのは、君を助けるためだったと思う。世の中全て、神々でさえもバランス(調和)が必要だ。どの神も、たとえそれが代替え人格や敵、兄弟や愛人であろうと、バランスをとるものが必要だ。君は彼女が持つ力を持っていないかも知れないが、君はおそらく彼女が必要とするものかも知れない。もし君がただの重荷ならば、彼女が恋するとは思わない。」
「ならば、彼女は愛すべき人を選ぶことが出来ると言うことですか?」
「いや、しかし、彼女は恋に落ちるに十分な時を過ごすために自分の周りにいる人は選ぶことが出来る。」と、彼は言った。
僕は言う暇がなかったので、次に何を言おうとしたか分からなかった。不明瞭な音とともに、シノブが僕の膝に座っていた。僕の目は彼女とエドワードを見たときに真ん丸なっていた。彼は振り向きもしなかったが、彼には聞こえていた。
「エドワード、ちょっとあることについて話しがあるのですが、いいですか?」
「彼女はいてもいいよ。」と、彼は単純に言った。
僕は慎重すぎてただ喜びを感じるよりも混乱していたが、その間、シノブは僕の肩に向かって腕を駆け上り、僕の首に鼻をこすりつけた。
.「私は小さな少女に小さな噛み痕があって、気づいた。」
「どうしてシノブの噛み痕だと分かったのですか?」と、僕は聞いた。彼は前へ体を傾け、シャツの後ろ側を持ち上げたので、左側の下半分にある傷跡が見えた。トミーに残された傷とそっくりだった。
彼はシャツをおろし、僕を見た。
「私は意地悪で彼女を処分しなさいと言った訳ではない。私は君の運が引きつける物しか知らない。でもそれがなぜ、君と私との唯一のコネクションとなるノーウェンを見つけさせたのか混乱させるのだ。彼女は君を守っているようで、君を故意に傷つけるようなことはなさそうだ。十分な注意を払って、長いこと彼女と2人きりになるようなところへ絶対行かなければいい。」
僕は同意した。
「注意します。」
「それに、君の恐ろしい悪運について考えさせられた。」
エドワードは自分のバッグに手を入れて何か小さい物を取り出し、僕に渡した。それは縦2インチくらいある鉄のペンタグラムとチェーンだった。それも明らかに強力な物だった。
「これはロネスの物だった。これはエネルギーや魔法を保持することが出来る。私は彼がどうやってこれを作ったのか知り得なかったが、緊急時に持っていると本当に便利だ。君は未熟で悪運の持ち主だし、そして今、君は彼の息子だから、君がこれを持っておくべきだと思う。」
「ありがとうございます。」と僕は身に着けながら言った。僕は父のことをあまり知らなかったが、僕は彼が誰だったか知り、僕がどうしてできたか分かって感謝していた。ただ、どうして僕の母親を選んだのか、まだ分からなかった。
「君がその悪運の持ち主であるのは、君が非常に強力だからだ。君は自分のエネルギーに立ち向かうのではなく、それをどう使うか学ぶ必要がある。それはある程度の助けにはなるだろう。前にも言ったが、この世に置いて、全てに調和がある。君の悪運はある意味、自然が君を公平に扱おうとしているからだ。残念ながら、それは変わらないだろうから、君には悪運がずっと付きまとうだろうし、君が特に何か例外なことを行うと、しばらくの間そのしわ寄せがあるだろう。君はそれを知っておくべきだと思った。」
「素晴らしい。僕が生存するのに良くなることは無いなんて、それこそ今僕が聞きたかったことです。」
ロネスが同じことをもっと絶望的な言い方をしたとは言わなかった。
「湧水の精霊たち…、僕がディヴィーナを探しているときに、1人見ました。」彼は何か期待しながら聞いていた。
「彼女は‘彼’がもう直ぐ現れると言ったのです。彼女はヴレチアルの事を言っていたのだと思いますか?」
彼は眉を上げた。
「私には分からない。彼女は本当に君に話しかけていたのか?」
「そうだと思いますが、僕は彼のことを言っていたのではないような気がするのです。彼女は恐れているように見えました。もしかしたら、あなたが彼女と話した方が良いかも知れません。」
「それはそんな風に機能するわけではない。死人たちは友達とは言えないので、出来るだけ避けて秘密を教えるべきではない。君に友好的にしたとしても、彼ら以外の何が聞いているか分からない。もし湧水の精霊たちが君に警告をするようならば、君は警戒するべきだ。もし何もしないようだったら、彼女はヴレチアルの事を指していたのだろうし、それでそっとしておきなさい。」
エドワードは本を読み続け、僕はシノブと遊びながら朝の空気を満喫した。しかし、僕がこの素晴らしくて平和な朝の空気に焦点を当てれば当てるほど、何かが間違っていると気づいた。
「何があなたを悩ませているのですか?」と、エドワードに聞いた。彼が自分の膝の上に本を置くのを見て、僕が正しかったと思った。
「何もない。ただ考えていただけだ。ヴレチアルが去った今となっては、本はあまり危険に晒されていない。君は地球に戻って彼女と暮らすことも出来るし、後で訓練をすることも出来る。」
もし今までエドワードの事が理解できていなければ、僕のことを追い返そうとしていると思ったかもしれない。
「それで、あなたとディヴィーナは?」
「私には君の付き添いが必要でないし、ディヴィーナは自分で自分の世話ができるだろう。君の彼女は君の心配をしているかも知れない。」 彼の声は計算されていて、感情が一切こもっていなかった。
「彼女はもう僕のガールフレンドではありません。僕は本のためにそれを諦めたのです。彼女は僕が強力なガーディアンであってほしいとは思わないでしょう。僕は気が動転しているときに電気を消してしまうかも知れない。」
それに、僕の父は彼女を認めなかった。
「彼女が僕に何が起こったのか見当もつかないと思いますが、戻るリスクをおかしたくありません。時が経てば、僕たちは結婚していたかも知れません、すると、本は再び危険に晒されるかも知れないし、また彼女の元を去らなければいけないかも知れない。それは出来ません。」
「君は自分の人生において、多くの愛しい人たちを無くすことになる。」
「ええ、僕は不死身になってまだ長くはありませんが、既に2人失っています。」
「君はディヴィーナを失った訳ではない。君は彼女のところに行って、彼女の傷が癒えるのを手伝ってもいい。治癒したくても、したくなくても、彼女はまだここにいて、彼女は良くなる。君が彼女の心を1度掴んだことがあるのなら、君がそれを再び出来ると信じている。」と、彼はいい、何か訴えるような眼差しで見た。
「君はきっとそれを父親から受け継いだのだろう。私は自分の兄弟の子が神々の中で唯一女性である神の心を掴むと言うことを計算すべきだった。」
「彼があなたについて言うことは正しかったようですね。」と笑いながら言った。すると彼は眉を上げた。
「彼が最後に行ったのは…、あなたにあることを伝えてほしいと言いました。」
彼が表情に不信感を表したので、僕は一息ついた。
「彼があなたは、非常に情熱的だと言いました。」
エドワードは怒って立ち上がり、自分のバッグを手に取った。多くの男たちの怒りの間違った側にいたことがあったので、僕は心配すべきかと思った。多分僕はエドワードと彼のリアクションに慣れて来たのだろうが、彼の怒りを危険だと思わなかった。
「何をしているのですか?」
「あいつは、いつもそう言っていて、今回彼は限度を超えた。私は彼の亡霊を追って、彼を殴ってやる。」
僕は家に戻りながら笑っていた。僕の父はまるで僕にプレゼントを残していったようだった。